ある飛行機の生涯
第4章 ぼくの新たな人生
それから数日後、ぼくは、今まで見たことがない巨大な船さんに、
大きなハッチから乗せられた。その巨大な船さんは、ぼくのような
ジャンボジェット機を軽々と積めこめ、ぼくの他にも、2機のジャ
ンボジェット機さんがいた。2機とも、ぼくと同じように改造され
ていた……。
その船さんは、滑走路の上にどんと浮かんでいた。浮かんでいる
のにも驚いたが、何よりも驚いたのが、数年ぶりに見た格納庫の外
だった……。大きな国際空港だったのに、民間機や民間人の姿はど
こにも無い……。滑走路にできたアスファルトの裂け目からは雑草
が伸びていた……。
世界がすっかり変わってしまったのはわかった。それも悪いほう
に……。
そして、ぼくを乗せた船さんは、空高く飛び上がった。自分以外
の力で空を飛ぶのは初めてだし、空を飛ぶのは久しぶりだ。残念な
がら窓は無く、外の景色は見えなかったが、雷のような電撃音が1
回鳴った。ぼくは、どこに連れていかれるのだろうかと不安になっ
た。いっしょに乗っていた他の飛行機さんに聞いてみてもわからな
かった。
思い切ってぼくは、この巨大な船さんに話しかけてみた。
「ねぇ、どこに向かっているんですか?」
「……オレに話しかけるな」
船さんはそれだけ言うと、いくら話しかけても無視した……。仕方
なく、ぼくは寝ることにした。やはり、なかなか寝つけなかった…
…。
他の飛行機さんに起こされた。どうやら、着いたようだ。ハッチ
が開いており、ぼくたちは船さんから降ろされる。
そこは、空軍基地だった。格納庫の中のプロペラ式の戦闘機さん
たちがぼくたちをじっと見ていた。ぼくたちが軍用機になったのは
間違いなかった……。
人間も降りてきて、出迎えの人間と何か手続きをしていた。そし
て、ぼくたちを残して、船に乗りこみ、どこかに飛んでいってしま
った……。
そして、ぼくたちは、さっそく格納庫に連れていかれた……。
格納庫につくと、すぐにハッチを開けられた。すると、そのハッ
チの中に、次々と何かを入れていった。
それは、爆弾だった……。ぼくは、B−52さんと同じ爆撃機と
なったのだ……。断れるわけではないので、ぼくは受け入れること
にした……。
ぼくの新しい人生が始まった……。しかしそれは、とても短いも
のだった……。