ある飛行機の生涯
第5章 ぼくの最期
そして、今、ぼくはここにいる……。
運良く、ぼくは海の上に落ちた。しかし、浸水がすぐに始まった。
パイロットさんは計器に頭をぶつけて死んだ。着水のショックで無線
が壊れてしまったので、助けは呼べない。まあ、ぼくを助けるなんて
無理だろう……。
ぼくはこのまま沈没して死ぬだろう……。もういろんな人を乗せて
飛ぶことも、美しい夕焼けを見ることもできないだろう……。
ぼくは、死を受け入れることにした……。
沈没するまでに、出生から今までを独り言として呟いていた。独り
言だからいいのだが、どうやら最後まで喋れたようだ。
もう海水がコクピットのドアまで来ている。ぼくの命はあと数分だ
ろう……。確かに死ぬのは怖いが、あの世で彼女に会えることを考え
ると気が休まった。無差別爆撃の件で地獄行きかもしれないが、それ
はそのときに考えることにする。もう疲れたんだ……。
……それじゃあね。