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てっしゅう
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愛されたい 第九章 離婚と再婚

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「今でも美容師になりたいって思うの?」
「いえ、今はそう思いません。でも目標考えないといけないですね・・・」
「そうよ。もう直ぐなんだから、考えたほうがいいわね。お父さんとよく相談して決めなさいね」
「はい、ありがとうございます。あのう・・・聞いていいですか?」
「何?気になることがあるの?」
「はい、お父さんのことで気になっていることがあるんです」
「お父さんのこと?何かしら、私で答えられるのかなあ・・・」
「結婚したいって言う人のことです」

横井は美咲に自分のことを話したのであろうか・・・智子はどう返事しようか考えなくてはならなくなっていた。

「お父さん、なんてお話されたの?」
「私がお母さんとやり直したら?って聞いたら、好きな人がいるから無理だって言われたの」
「好きな人・・・そうなの」
「どんな人と結婚するのか気になって・・・美咲のこと気に入ってもらえるかどうか心配なの」
「美咲ちゃんと一緒に暮らすようになれば、お父さん結婚するかなあ・・・新しいお母さんとうまくやれないと辛い思いをしないといけなくなるからね」
「お父さんの幸せを壊したくないって思うから、私が今度は我慢する。美咲のこと気遣って結婚を諦めるような事はして欲しくないの。おば様からもそう言って下さらない?」
「美咲ちゃん・・・」智子は隣に座っていた美咲の手を握った。美咲も握り返した。

「おばさま・・・間違っていたら許してくださいね。お父さんの好きな人って、おばさまじゃないの?今日の昼ごはんの時、お父さんの態度見てそう感じたの。違います?」

智子はもう隠せないと思った。ここでうそを言うことは簡単だけど、後で何故って解ったら気まずくなるような気がした。高志のこともあったので、慎重に話をした。
「美咲ちゃん、今から話すことはあなたや横井さんにとってとっても大切なことだから、納得できるまで聞いてね」
「はい、やっぱりそうなんですね・・・」
「横井さんからプロポーズされているのは確かよ。でも、形の上では私には夫がいるの。今日の話をする前にね夫とは離婚が決まっていたの。書類を出すのは少し先だけど、もう事実上は成立していたの」
「そうだったんですか!おば様も離婚されたんですね。お父さんその事知っているんですか?」
「まだ、話してないわよ。これからが大切なことなの。よく聞いて。正式にお父さんとは結婚できないの。しないって言うほうが正しい言い方だけどね。何故だか解る?」
「おばさまが、まだそこまでお父さんの事好きじゃないって言うことですか?」
「お父さんのことは・・・大好きよ。でも、そうじゃないのよ。もっとあなたに関係すること」

美咲が納得するように智子は話し始めた。

「私に関係すること?戸籍とかそういうことですか?」
「違うの。美咲ちゃんの好きな人は誰?」
「高志さんですよ。どうして・・・あっ!そうか・・・」
「解った?何が言いたいのか?」
「お父さんとおばさまが結婚したら、高志さんが私のお兄ちゃんになるって言うことですよね?」
「そうよ。そうなってしまうの。だから出来ないし、しないの」
「そうなんですね・・・お父さんはその事どう言っているのですか?」
「先のことだからまだ考えないって言ってたわ。私の離婚を知ったら気持ちが変わるかも知れないけど」
「じゃあ、もう直ぐお父さん来るから聞いてみる。いいでしょ?大切なことだから。美咲にはおばさまがママになってくれたらこんなに嬉しいことはないから、絶対にお父さんと一緒になって欲しい」
「私もあなたのお母さんと同じで不倫したのよ。許せるの?こんなことになるなんて思わなかったから・・・ごめんなさいね。本当にごめんなさい」

智子はうつむいて手で顔をふさぐようにして泣き始めた。

「おばさま・・・お父さんは独身なんだから浮気じゃないよ。お母さんはまだお父さんと一緒に暮らしている時にあの人と付き合い始めたのよ。おばさまとは違うって・・・泣かないで、美咲のこと気にしないで、お父さんを幸せにしてあげて。そうしてくれたら不倫なんて許すから・・・ね?ママになって」

なんて優しい子なんだろう。そんな言葉を聞かされて泣かないでいることは無理だと智子は胸がいっぱいになった。周りで食事をしている客の目もはばからずに横井が来るまでずっと泣き続けていた。

「美咲!どうしたんだ?何か言ったのかお前?」
「違うよ、お父さん。ママになって、って言っただけだよ」
「智子がみんな話したのか?」
「うん、全部聞いた。美咲はおばさまがママになってくれることを願うよ。高志さんのことは・・・友達で構わないから」
「智子、泣かないでくれ。ゆっくりと話そう。時間はあるから」

横井は肩を抱いてそう言ってくれた。智子は美咲の心配をしなければいけない時に自分のことで気遣いをさせることが悪いと思った。
「ごめんなさい・・・もう泣かないから・・・美咲ちゃん、ありがとう」

「おばさま、お父さんに早く言ってあげて」
「智子、なんだ?話すことがあるのか?」
「はい、夫と正式に離婚が決まりました。別れて欲しいと言われたので、承知しました。まもなく書類にサインして離婚届を出します」
「そうだったのか!4年も待たなくてよくなったんだな」
「そうですね。私も夫から言われてビックリしたぐらいでしたから、直ぐに話せなくてすみませんでした」
「いいんだよ。住むのはどうするんだ?」
「高志が大学を卒業するまであの家に居ます。その後は売って、半分ずつに分けると話し合っています」
「どうする?俺たち。一緒に暮らしたいけど、無理か?」
「そんなに早くは・・・無理です」
「別れてご主人はどうするんだ?」
「自分の実家に行くそうです」
「一人でか?」
「もちろんです。有里も高志も私の傍に置きますから。母親ですもの別れるなんて出来ません」
「それが普通だよな・・・」

智子は夫と離婚した。偶然にも役所に伸一が届けたのは11月1日だった。香里は加藤と正式に入籍をした。それも偶然11月1日だった。快晴に恵まれた半田産業展示館のオープンの日が明けようとしていた。

「有里、高志、お母さん行って来るね。帰りは遅くなるから、自分たちで済ませてよ」
「大丈夫よ、お母さん。お仕事頑張ってね!行ってらっしゃい」

この日のために買ったスーツを着て電車に乗った。通勤している自分がOLに戻ったような気がした。智子の中ですべてがうまく運んでいるような気分の良い日に感じていた。
オープニングセレモニーでテープカットされ、半田市長が挨拶をした。来賓代表で地元企業の社長が続いて挨拶をした。一般入場者に混じって横井の顔が智子の目に入った。

「行雄さん・・・いらっしゃい。ありがとうございます」
「おめでとう。君のスーツ姿もいいね。似合っているよ。綺麗だ」
「こんなところで・・・困るわ。聞こえるじゃない」
「すまん・・・今日はレセプションがあるんだったね?お酒飲むんだったら迎えに行くからメールして」
「はい、そうします」

賑わいを見せた初日が終わろうとしていた。何とか無事に案内をこなした智子に館長がねぎらいの言葉を言った。
「ご苦労さん。楠本さん、この調子でお願いしますよ」