小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

愛されたい 第九章 離婚と再婚

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
第九章 離婚と再婚

香里の両親は再婚に賛成していた。横井が浮気をして娘を傷つけたと信じていたからだ。同席していた祖父や祖母からも「お母さんが幸せになるように解ってあげて」と強く美咲は言われた。加藤は香里が横井のことを疑って相談していた美咲の小学校の一学年上の男子の父親だった。学校行事などで顔見知りだったことで、何かと相談しているうちに仲良くなっていた男性だった。二人が付き合い始めて横井も知ることになったが、同じように加藤の妻も知ることとなり、ずっともめていたが目出度く最近離婚が成立して、今日の運びとなった。

香里がここの所悩んでいたようにそして寂しくしているように美咲が感じられたのは、加藤の離婚がなかなか成立しなかったことへの焦りと寂しさだったのだ。二人はずっと関係を続けていた。美咲はそれを知らなかった。母親の行動を怪しむような気持ちがなかったから気付かなかったのであろう。加藤が帰ってから美咲の不安は的中した。

「美咲は加藤さんのことどう思った?正直に答えていいのよ」
「お母さん・・・再婚するの?」
「そのつもりよ。なかなかあの人奥様と離婚出来なかったから、ずっと待たされたの。でも、晴れて離婚したから今日美咲に会ってもらったの」
「お母さん・・・ひどい、奥様の居られる方と付き合っていただなんて」
「何を言ってるの。離婚することが解っていたからお付き合いしたのよ。別れたお父さんとは違うの」
「今日、お父さんと逢ってきた。私お母さんと仲直りしてくれないかって頼んだのよ。お母さんが寂しそうにしていたから、それがいいって、そう思ったのに、お母さんずっと付き合っている人がいたのよね?なぜ内緒にしていたの?」
「結婚出来るかどうかまだ解らなかったからね。美咲に変な心配掛けたくなかったし、相手の気持ちも考えないといけないでしょ?それより、あなたこそ何故内緒で横井と会ったりしたのよ!」
「私はもう17歳なのよ、自分で決めて悪いの?」
「あなたと暮らしているのはお母さんよ。そのこと忘れたの?あれだけ会ってはいけないって、言ったはずなのに」
「ねえ?本当のこと教えて・・・お父さん本当に浮気したの?証拠見たの?」

母親が言っていたことを信じてきた美咲だったが、今日の行動を見て疑う気持ちが現れ始めた。

「美咲は何が言いたいの?横井に何を聞かされたの?あの人はね会社の女の人とたくさん遊んでいたのよ。証拠なんて要らないの。態度でわかるから」
「うそ!お母さん、加藤さんとの付き合いをお父さんに知られて喧嘩になったんじゃないの?お父さんが浮気したって言わないと引っ込みがつかなくなったんでしょ?」
「違うわよ。あの人が先に浮気したから・・・」
「お父さんは、浮気なんかしてなかったよ。私に優しかったし、お母さんのことも愛していたのに・・・どうしてお父さんがしてないって言った言葉を信じてあげなかったの?」
「信じられないような態度をとったからよ。あなたにそれが解るって言うの?」
「信じないから信じられていないように感じるんだよ。お父さんはきっと寂しかったから、お母さんに辛く当たったり、仕事に打ち込んだり、したんじゃないの」
「美咲はお父さんのこと好きだったからそんな風に考えられるのね。お母さんの気持ちなんか理解できないって言うのね」
「お母さんの気持ちは加藤さんに向いていたんじゃないの?そうなってお父さんとのことがギクシャクし始めたんじゃないの?」
「解ったようなことを言うのね。そんなに嫌うんだったら、あなたは横井のところに行っても構わないよ。私は加藤さんと再婚するからそのことは覚えていて頂戴ね」
「お母さんが、加藤さんのこと愛していて再婚することに反対はしないわ。お母さんの人生だもの、私が口出すべきじゃないしね。でも離婚の本当の理由が知りたい。それだけは教えて」
「横井は浮気をしましたと言ったわけじゃない。疑わしかったことは事実だけど。私は、はっきりと付き合っている人がいるって言ったわ。そのことが離婚の理由よ。美咲を騙していたわけじゃないよ。横井があなたを悲しませないでくれって言ったから、引き取る理由にしただけ。大人の判断だったのよ」
「私のことお母さんは、愛してくれていなかったの?愛していたのは加藤さんだったの?」

悲しくなった。この5年間のいろんなことがすべて崩れ去ろうとしていた。美咲は今直ぐ父に逢いたいと思い始めた。

香里が横井と別れた理由は加藤のことが好きになったからだった。美咲にそれを言うと横井に連れて行かれると思い、手元に残すために横井が浮気をしたと教え込んでいたのだ。横井は美咲を引き取って一緒に暮らすことも考えたが、何もしてやれない自分では可哀そうだと感じ香里に預けて離婚した。傍目では美咲は母親の元で何不自由なく暮らして、学校に通っていた。父親と別れてしばらくは寂しく感じていた美咲も、女になるに連れて母親の心境が解るようになり、父親のことは言わなくなっていた。

美咲が父親を意識するようになったのは高志との付き合いが始まってからである。高志も同じように父親に対して不満を美咲に話していた。高志から「父さん」と言う言葉を聞くたびに、徐々に自分の中で横井に逢いたいと言う気持ちが出始めていたのだ。高志は「父さんは自分としっかりと話してくれない。直ぐに勉強とか立派な社会人になれと言葉をはぐらかしてしまう」そう愚痴っていた。高志は父親に息子として何を考え、どうして行きたいのかと言うことを聞いて欲しかったのだろうと、美咲は思っていた。

大人になり始めた美咲にとって、父と母の事ははっきりと納得させて欲しかったことだったのだ。そして今日すべてのことを知ることが出来た。父の思い、母の思い、それは今までに美咲が知っていたこととは正反対であった。横井の大きくて温かかった手のぬくもりが忘れられない。気がついたら家を飛び出して近くのコンビニに来ていた。夕方の混雑で出入りする人を見ながら美咲は携帯のボタンを押していた。

「お父さん?」
「美咲か?どうした?」
言葉が出なかった・・・
「美咲!どうした?聞こえないぞ」
横井には電話の向こうで美咲が泣いていると解った。
「お父さんに解るように話してくれないか?」
「今すぐ逢いたいよう・・・」それだけ言って泣き声が大きく聞こえた。
「美咲・・・お母さんと代われ」
「家に・・・いないよ」
「どこにいるんだ?何してる!」
横井はただ事ではないと気持ちが焦った。

「コンビニにいる」
「しっかりするんだ!変なこと考えるなよ。何も言わなくていいから、家に帰れないんだったら、そこに居ろ。お父さん今すぐにそこに行くから。どこのコンビニだ?」
「島田の交差点のサークルK・・・家には帰らない。待ってる」

家に帰ってきたのもつかの間、横井は直ぐに車を走らせた。

いけないことではあったが運転しながら横井は智子に電話を掛けた。
「俺だ、今いいか?」
「行雄さん、どしたの?運転中じゃないの?」
「緊急なんだ。美咲が家出した」
「何て言ったの?」