世界の彼方のIF
月夜の書簡
〜往信〜
そして今宵も
貴女が還った常世(とこよ)の國を
見あげるだけの 終夜(よもすがら)
月下は一縷の 道標(みちしるべ)
富士の高嶺を訪(おとな)うも
この手は雲も 掴めずに
天に一番近い山は何処だろう――
***
〜返信〜
この夜(よ)の向こうに貴方がいる
月は地球を清(さや)かに映して
私に優しく教えてくれる
雲居を滑る光跡に
天への梯子を準(なぞら)えて
此処まで辿り着こうとしてる人
嗚(ああ)貴方はお忘れですか
御身を大地に留めているのは
決して重力などでなく
偏に愛、その重みだと