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ぷぷぷっぱ
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悲雨

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今日未明、自宅で首吊り自殺をしている男性が発見されたようです。
志望動機については不明ですが・・・








――雨、水蒸気が凝結することにより雲が出来、雨粒が成長して落ちてきたものだ。
昔、雨が降るのは神様の涙だよ。雨が降ったら誰かが死んだんだよ。と聞いたことがある。


啓介は突然降ってきた雨に家路を急いでいた。なんせ今日の朝の天気予報では降水確率は10%だったのだ。
そして朝の天気予報士の顔を思い出し、嘘つきめと毒づいた。大雨ではないことが唯一の救いだった。
鞄を傘代わりにしながら小走りで腕時計を見ると午後11時を回っていた。
帰宅するとすぐに啓介はテレビのスイッチを付けた。
別段そのことに深い意味はなく、ただ家の中の雰囲気が寂しいからという理由、声が欲しいと理由にほかならなかったはずだった。
そしてドカッとソファに腰を下ろした。
しばらくして啓介は喉が渇いたので冷蔵庫を開けビールを流し込んだ。「くぅぅ」と快感ともつかぬ声を漏らした。
そしてレンジで温めた妻が作り置きしてくれていた煮物を口へ運ぶ。
うん、絶品だ。
家の中はひっそり閑としていた。景色が一瞬モノクロに見えた。
ああ、疲れているんだなと啓介は思った。
風呂にでも入って寝ようかなと考えたが、明日は休みなのでやめることにした。



結婚していて3年が経とうとしていた。
それでも啓介は妻を溺愛していた。
歳は彼女のほうがいくらか上で大学で出会った。初めは大学友達の間でも高嶺の花として扱われていたのだ。
それがあるとき、話しかけられそのまま交際へとなり、そのままゴールインしてしまったわけだ。
プロポーズの時、結婚してくだしゃいと噛んでしまった啓介に対して
「かわいい〜」と頭を抱かれた。柔らかかったことを今でも鮮明覚えている。
妻は自分より一回り小さくいつもせかせかと笑顔を振りまきながら家事をしていた。
いつも家の中の空気がピンク色に染まっているのはほかでもない彼女のおかげだ。
外見はというと夫として贔屓目に見なくとも、十分可愛い、いや美人な妻だった。
一方、啓介はというとそこらへんにいくらでもいるような普通の青年だった。
もともと自分に自信がないのもあった。
そのため、この人を嫁にもらった時、俺でいいんだろうかと真剣に考えたくらいだ。
だから、どんなにつらくともあの笑顔を見れるならと頑張った。
久美子は生まれ付き子供が出来ない体で原因がなにかは啓介には分からなかった。聞いても気まずいだけだ。
そのことを気にしてはいるようだったが、それで不仲になるなんてことはなかった。


だが、そんな愛おしい妻は今実家に帰省している。なんでも母が倒れたというのだ。
啓介自身も行こうと思ったが久美子に
「大丈夫、大丈夫、今忙しいんでしょぉ〜」
と言われた。その言葉通り今、会社は忙しい。そのため帰りが遅くなったりすることが毎日なのだがそれでもおかえりと
玄関で迎えてくれる妻に感謝していた。だから俺が行こうかとかいいそうになったがその言葉は飲み込んだ。
そして仕方なく
「悪い、じゃあ気を付けてな」
と厚意に甘えることにした。



作品名:悲雨 作家名:ぷぷぷっぱ