世界の果てから、はじまる物語
あの夢のような一日から、ずっと毎日勉強した。
寝る間も惜しんで、わき目もふらずにひたすら勉強した。
もしも落ちたら、なんて考えなかった。受かるしかない、それだけを考えてきた。
今日は、合格発表の日。これで全てが決まる。
掲示板に張り出された紙の中から、自分の名前を探す。
「……」
このまま、なかったら、死んでしまうんじゃないだろうか。
「……」
百番…、二百番…、三百……。
「……あった」
番号も名前も一致している。合格したのだ。
涙が込み上げてきた。頭は真っ白だけど、涙だけがあふれだした。
ぽん、と肩をたたかれ、振り返る。
「あ」
「よう、久しぶり」
彼だ。あたしの世界のために自転車をこいだ彼。
「名前あった?」
「ありましたよ、ふふ、捕まえるって言ったじゃないですか」
流星も飛行機雲も待ってはくれなかったけど、
あたしが足を引きずってのろのろと歩いても、この人は待っててくれた。
「おめでとう。じゃあ、入学式は、うん、一緒に登校しよっか」
真っ赤になった彼の顔を見て、嘘じゃないんだと思ったら嬉しくなった。
「はい。あ、そうだ、すみません」
「なに?」
「名前を聞いてないです。あたしも言ってなかったし…」
「ああ!そうだった、そうだった」
「俺の名前はね――」
世界の果てから、はじまる物語。
作品名:世界の果てから、はじまる物語 作家名:武蔵