世界の果てから、はじまる物語
あーどうしよ、困ったな、どこに落ちたかとかしらねーし。
女の子付いて来てくれるし。優しいな、もう信じてくれてんじゃん。
「ねー、さっさと証拠みせてくださいよぉ。家に帰って受験勉強したいんですけど」
「あ、中三?俺と一緒か」
「え、同い年?そんなんで受験大丈夫ですか?」
「そんなんってなんだよ、一応学年ランキングの十番台から落ちたことねえけど」
「え、うそ、本当に?じゃあ志望校ってやっぱり山高ですか?」
「あんなガリ勉高校やだね、もっと遊んで暮らしたい」
「のんきですねえ…。就職氷河期ですよ?」
ああ。世界はそんな感じらしいね。でもそれに踊らされるみたいに必死で勉強していい大
学にいくのは嫌だ。そんなの俺じゃない。
「伏せろ!」
「!?」
勢いよく女の子の肩を抱き、引き寄せる。女の子は不自然に足をふらつかせた。
「チッ、もう追手が…。FBIめ、俺らが『真昼の流星』を追いかけてることにもう気付きやがった!」
「え、FBI!?」
「そうだ、『真昼の流星』を見る『邪気眼』の人間たちを捕獲して、殺すんだぞ!」
「嘘ですよ、そんなの聞いたことないもん!」
「この世には、トップシークレットってやつが何百個もあるのだよお嬢さん」
きもい。小声でいった声はしっかり俺の耳に届いた。あーもう絶対帰らさねえ。
「とりあえず逃げるぞ。俺らがちんたら走ってもダメだ、電車で遠くまで行って奴らをかく乱する」
「電車ぁ?あたしあんまりお金ないんですけどぉ」
「……。まあ、いいから、乗るぞ!」
露骨に嫌そうな顔。素直な女の子だなぁ。
作品名:世界の果てから、はじまる物語 作家名:武蔵