カナダの自然に魅せられて~リスを探して10日間(2)
美月が前にリスを見たことがあるという場所でシャトルバスを降りた。
あとで、地図で確かめると、公園のほぼ3/4は回ってきたところになるようだった。
いかにも巣を作っていそうな古い大きな木の穴も覗いてみた。
やっぱりいなかった。
じゃ、ちょっと歩いてみましょうと森の中を歩くことにした。
バスが走っている道から少し中に入ると、そこはもう太古の原生林を思わせる林なのである。
雷が落ちたのだろうか途中で引き裂かれ立ち枯れた樹、根こそぎ横倒しになったままだったり…複雑に絡んだ樹の根っこも見える。
クマが出てきそうな道だった……そんなふうに思った。
数十メートルくらい横には並行してバス道が通っているから、クマなんか出てこないだろうが。
車の音も聞こえない。靴の音がザクザク響くだけの静寂の世界だった。
そう、私たちは諦めの境地で、靴の音しか聞こえないほど無言になっていったのだった。
キョロキョロと左右の木を見上げながら、30分ぐらいは歩いただろうか、目の前が開けてきた。
泳いでいる人もいる。プールも見える。
ここまで、リス1匹どころか、動物1匹たりとも出くわさなかった。
歩きつかれたのと目的が果たせなかったのとで、三人とも疲れ果て、話す元気もなかった。
原生林を抜けて、平地の公園をしばらく歩いた。
すると、やっと出会えたのだ!!動物に…リスではなかったけれど…。
グースと白鳥とアヒルたち…小さな池でくつろいでいた。
今までにも出会った動物だけど、それでも嬉しいと思うほど、今日は何にも出会わなかった!!
野生のブラックベリーも、食べてちょうだいと言わんばかりにあちこちで実をつけているというのに…。
やっぱり、リスには出会えなかったなあ…。
と、その時、向こうの橋の袂に何やらタヌキによく似た動物が…。
こちらの雰囲気を感じると、スススーッと茂みの間に入っていってしまった。
後を追いかけた。
それは、川の中に入り、奥の茂みに隠れてしまった。アーァ。
しかし、またまた右方向からこっちに向かって歩いてくるものがいるではないか。
「あ、アライグマ!!」
「おねえちゃん、おねえちゃん、いたよ、いた、いた!!」
「美月も来て!!」
一見タヌキのようだが、顔は三角で鼻は細く尖り、目からほっぺにかけてパンダのような黒いシマ模様。
シッポは太くフサフサしていた。
動物園で見るだけのアライグマがこんな平地を平気で歩いている…そのことに感動した。
リスに出会えなくても十分だと思った!
その1匹を見つけた観光客たちがたちまち彼の周りを取り囲んだ。行き場を失ったアライグマは可哀想に立ち往生してしまった。
とその時、誰かがピーナツを投げた。
すると、小さな両手でピーナッツを抱え胸の前でスリスリして食べた。
……ほんまに食べ物を洗うんや!!……
と、向こうの茂みから今度は家族連れのアライグマが出てきた。可愛い子どもを三匹連れていた。
やっぱり物欲しそうに見上げていた。
『食べ物をあげてはいけません』と言われているのに、それを守らない観光客はどこの国でも多いものだ。
「頂戴」って言ってるのにあげないのは可哀想と思ってしまうのだろうか。
しかし、後で行くカナディアンロッキーは違った。
ーー それはまた後で詳しく書くことにしよう。ーー
作品名:カナダの自然に魅せられて~リスを探して10日間(2) 作家名:ねむり姫