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不思議な空間

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 黒々とした岩場に来た。意外に波は穏やかで静かだった。夕凪というのだと、北は思った。よく見ると、水は驚くほど透明だった。しゃがんで水の中を暫く見ていたが、残念ながら魚影は見当たらない。時刻は午後五時になろうとしていた。
「済みません」
 声をかけられた北は驚いて振り向き、見上げた。先程の髪の長い女性だった。立ち上がりながら北は、
「何ですか?」
「この海岸の名前を教えてください」
「知らないんです。ごめんなさい」
「そうですか?意外でした。ごめんなさい」
「こちらこそ……あなたは一人旅ですか?」
「ええ……おかしいですか?」
「そんなことは……私も一人旅ですよ」
「そうなんですか。いつも?」
「……そうでもないんですが、そちらは?」
「初めてです」
「ここの露天風呂は最高でした。心身ともに凄く癒されました」
「わたしはこれからです。じゃあ……」
「夕食は六時からでしたね。急がないと」
「はい。行ってきます」
作品名:不思議な空間 作家名:マナーモード