不思議な空間
佐島が空になりそうなグラスに、注ぎに行った。
「遅くなりました。やっと野暮用から解放されました」
宿の主人がもう一本、酒と何かを持参した。みんなで拍手をした。
「もう、寝ちゃったのかと思いました」
と、佐島が笑う。
「チェロの演奏が素晴らしかったので、眼が覚めました」
「下手で恐縮です」
「上手でしたよ。迫力がありました」
「本当です。感動しました」と、祥子。
「いい音色でした」由紀が云った。
「来年は二曲以上ですよ」と、北。
「私はオカリナをあとで吹こうかな」
笑顔の佐島に酒を注がれながら、ひげの男は眼を細めた。
「それはいいな。何を聴かせてくれますか?」
「アニメ関係の名曲をね……」
「ジブリ関係でしょう」と、祥子。
「鋭いな。当たりです」