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禁断の扉(改訂版)

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髪が伸びた、かなりだ、肩くらいまである。
僕は高校一年生、明日は頭髪検査である。だが、僕は美容院は利用しない。
到って普通の床屋で充分なのだ。だが、ふと、思い立った。
 "いつもの御店のオヤジは、世間話で退屈の間を埋めるてくれるが
ほとんど愚痴ばかり、それも飽きが来た。"
今日は、趣を変え、雑誌に載っていた美容院を利用してみた。お店の屋号は
「ビューティービュー」何処か女性的なニュアンス、だが、然程気にも留めず
扉を押した。
「いらっしゃいませ~」
華やかな雰囲気の店内と、その雰囲気に見合う華やかな女性スタッフ。
こんなにも美容院は床屋と雰囲気が違うものか?
順番待ちのお客が三人、これくらいなら僕は、我慢できる。
受付の女性から、声を掛けられる。「初めての来店で御座いますか?お客様?」
黒のパンツに鮮やかな白のブラウス、髪は綺麗に後ろで団子にしていて
若いし綺麗だし愛想も良いから、第一印象問題なしだ。
「こちらにご住所電話番号お名前を」ー顧客ノートを差し出す店員。
「ハイ」僕が記帳を終えると、店員はすかさず話しかけてきた。
「中村 智巳(ともみ) 女の子みたいな名前ねっ」
「ハイ、よく間違われるんですよ、色白で華奢、だから短くカットして男らしくー」
「ええっ?勿体無い、綺麗で柔らかそうな髪の質なのに?」
考えてみれば、あまり体育会系の筋肉質でもない、草食系の僕、特に短く
したところで、果たしてそれが自分に似合うのだろうか?
迷う自分に店員は切り出す。
「まかせてもらえば、あなたにお似合いにできるけど、どう?」
 「まかせてもいいけど、校則の基準があるから・・・」
僕はそう言いかけたけど、彼女は聞いちゃいなかった。

「ハイ、じゃあ順番が来るまでこちらで御待ち下さい。」
いつの間にか、控え席は二人減っていた。同じ歳くらいの女子が一人、席で大人しく
待っている。彼女はこちらを見て、少し会釈して、何故かクスッて、笑った。そして
僕が席に着くと、雑誌を渡してくれた。
「ハイ、ともみちゃん、アンアンだけど、いいかしら?」
少し、不良っぽい彼女は、僕をからかっているかの様だ。先程までの店員との会話を
聞いていたのだろうか?僕は少しおどおどしながら聞いてみた。
「聞いてたんですか?さっきのやりとり・・・」
「ウン、でもさ、似合ってるよ、ともみって名前、可愛いじゃん~いいよ~」
彼女は、高校生なのに化粧もしている、女の子の間じゃ常識なのか?でも長い睫を
カールさせたり、頬に紅をつけたり、口紅もつけたり、なんだか女の子って変、
どうしてそんなに大人びたりして、自分を変えたいのだろう?彼女の顔をずっと眺め
ていたら、彼女は僕の顎をキュッと指でつかんで、自分の顔の手前まで寄せると
言ったんだ。
「ともみちゃん、化粧してみる?多分興味あるんでしょ?」
彼女は、肩から提げた白い小さなポーチからコンパクトを取り出し、化粧パフみたい
なのでファンデーションを少し拭って、僕の顎から頬にかけてパタパタやりはじめた
「えっ?やめろったら!、変だろ、んなことすんの、やめろよ~!」
少し強引みたいだったんで必死に抵抗した。でもパタパタやったんで、少し丸みを
帯びた僕のフェイスラインの右半分だけファンデがついて、艶っぽくなってしまった
そして、甘ったるくてなるい、女の子っぽい化粧品の匂いが僕の鼻腔をついた。
「ははは、からかってみただけ、でも、意外と最近の男の子、こういうの嫌いじゃない
子多いのよ、君も絶対似合うって~」
彼女は、クレンジングみたいなのをポーチからだして、それを脱脂綿みたいなのに
湿らせると、僕についたファンデを拭ってくれた。
「兵頭さん、お待たせしました~」彼女の順番が来て、呼ばれた彼女はクスクス笑い
ながら僕を振り返り「また、後でね・・・」と言った。
僕は、もう暫く席についてアンアンを読んで待つしかない。女性の雑誌など、見たこと
ないが、どうなんだろ?何故だか興味は沸いた。それは開けてはならないパンドラの
箱を開けるような心境だった。少しドキドキする。男がこんな雑誌を・・・なんて思わ
れるのは嫌だが、僕は、控え席には他に誰もいないのを確認してページを開いた。

へ~っ、こんなファッション流行ってるんだ~メイクもこんなにバリエーションがあるんだ
なんだか女性誌って面白い。恋愛ごと相談や、男性を喜ばせるSEXテクニックとか
のページもあるんだ。イケメンランキングやブサメンランキングなんてのも面白い。
読んでいるうちに、最近の女の子がどんなことに興味もって、どんなことが流行っている
のか手にとるようにわかる。なんだか女って楽しいじゃん。男よりも断然面白いかも~
次第によからぬ方向へ進んでいってしまいそうになる自分を疎ましく思いながらも、
気がつけば、その世界に充分浸って、酔いしれている自分がいた。
ふと、辺りを見ると、控え席が女性客でいっぱいになっていた。女性誌を読みふけって
いる男の自分が、なんだかとても恥ずかしくなった。そして自分が男性であるという
違和感を強烈に感じた。彼女達は対面を非常に気にするから、外出する時は化粧して
香水をつけたりしている。それに女性独特の着座姿勢、両足首を揃えるように座る。
男には絶対できない。男は真似しても股がきちんと閉じないようになっているし、
内股の習性もない。でも何故だか男座りで股を開いている自分が恥ずかしい気分に
なってくる。”はしたないじゃない、おやめなさい!”って誰かに言われそうな気さえし
てくる。ちょっと焦っていたが、やっと順番が来たようだ。綺麗なお姐さんが僕を呼ん
だ。「中村さん、お待たせしましたどうぞ」
僕の髪を担当してくれたのは、栗毛のショートヘアーが素敵な二十歳くらいのお姐さん
だった。色白で小顔な彼女はメイクのせいなのか、まるでお人形のようだ。
僕と一緒に鏡に映った彼女がニコッてした。それだけで何故か幸せな気分になりそうな
不思議な女性だった。
彼女の黒いエプロンに、読みやすい大きな字のネームプレートがピンで留めてあった。
それには”小嶋 じゅん”と書いてあった。
隣のチェアーでは不良っぽい彼女が、未だカットをされていた。小嶋さんは、不良の彼女
の元へいくと、彼女をつついて小声で話したりして、やたらキャッキャとはしゃいでいたが、再び僕ののチェアーのところへ戻ってきた。
「ちょっと髪質をみさせてね」小嶋さんはそう言うと、指でサラッと僕の髪をすいた。
「柔らか~い、男の子の髪とは思えない~こういうのいいわ~素敵」
小嶋さんは、僕の髪を触った途端、やたらと気分が高揚しているようだ。
僕は小嶋さんに、頭髪検査の基準をざっと説明した。
「校則では、襟足は首が見えるくらい、耳は隠くれない程度に刈り上げて、前髪は特に
長くなければ問題ないのですが・・」
それを聞いた小嶋さんは、少しご立腹。
「ええっ?まかせてくれるんじゃないの?校則って?、こんな素敵な襟足を切ってしまう
なんて~耳もだしてしまうの? つまんないじゃん~」
「ええ、でも校則ですから・・・」
「校則なんて、やぶっちゃえ!」隣のチェアーで髪を切っている不良の女の子、兵頭さん
が言った。
作品名:禁断の扉(改訂版) 作家名:NAO