「神のいたずら」 第三章 優との再会
終了時間のチャイムがなった。帰ろうとした時に、何人かの男子が近寄ってきて話しかけられた。
「小野、お前の父さん外人なのか?」
「違うよ・・・クオーター」
「何だそれ?」
「四分の一外人の血が入っているって言うこと」
「ふ~ん・・・顔はそんなふうには見えないけど、どこの国だ?」
「ロシア」
「目も少し青いぞ」他の男子も覗くようにして見た。
「見ないで!青くなんかないから」
「何言ってるんだ、俺達より少し青いぞ、なあ、みんな?」
そうだ、そうだ、と声がした。
「ねえ、だから何?」怖い顔をして反論すると、戸田が近づいてきて、
「止めろよみんな。仲良くしようよ・・・いじめるやつは僕が許さないぞ!」戸田は明らかにそこに居た男子の中では一番大きな体付きをしていた。碧に話しかけていた何人かはそう言われて、教室を出て行った。
「戸田君・・・ありがとう」
「いいんだよ、あいつら・・・今度変なこと言ったら、やっつけてやるから。安心しろ小野」
なんて頼もしい言葉だろう。男子が嫌いだと思っていたが、隼人の気持としても達也の台詞はかっこよく聞こえた。
家に帰って、今日のことを弥生に話した。
「そんなことがあったの・・・これから大変ね。戸田君って素敵じゃない!もう好きになったんじゃないの?」
「ちょっとね・・・」
「そうそう、絶対に変なことしちゃダメよ。昨日も言ったけど、碧にはまだ早いから・・・」
「解ってるよ・・・お姉ちゃんにしがみつくほうが気持ちいいもん!」
「困った子ね・・・中学一年になったというのに・・・」
弥生はあきれていた。事故が起こる前の碧はこんなふうじゃなかった。自分に甘えて来るなんて考えもしなかったからだ。
いよいよ授業が始まった。真新しい教科書を開いて先生の話を聞いていたが、なんとも退屈に感じる。それはそうだ。碧の脳には隼人の知識が詰まっていたからだ。
これから三年間当たり前の事を聞かされるのかと思ったら憂鬱になってきた。家にあった弥生の使ってない教科書をこっそりと持ってきて、読んでいた。まだ高校の方が学習出来ると考えたからだ。授業中先生に質問されても100%答えを解答できる碧にクラスのみんなは少しずつ敬意を持つようになってきた。
「小野は頭いいぞ」そう評判になった。清水は姉の弥生もそこそこ勉強が出来ていたから家系だろうと思えたが、それにしても優秀すぎる。
一月ほどして部活の締め切りになってきた頃、どうしようかと迷っていた碧に清水は自分が受け持ちをしている体操部への入部を勧めてきた。そこにはクラスの戸田も入部していた。身体の大きい彼は自慢の筋力を生かしたいと思っていた。逆に碧は小さな身体を発達させたいと思っていたから、体操はその役に立つと、入部を決めた。
「達也君、これから一緒ね。よろしくね」
「碧、嬉しいよお前と一緒に出来るなんて」
淡い気持ちではあったが、達也は碧のことを気にし始めていた。小さくて可愛いと思う反面恐ろしく頭のいいところも気に入っていた。それは達也がクラスで二番目、いや学年で二番目の成績だったからだ。お互いはよく話し合い楽しい時間が碧の学校生活を楽しみなものに変えていた。
直ぐにクラスでは二人が出来ていると評判になってしまった。男子から「ピュー」とヤラシイ口笛を吹かれる。女子からも嫉妬の視線を感じる。達也はどんなときも碧には優しかった。隼人としての気持ちの中に達也なら受け入れても構わないと言う変化が訪れていた。
「なあ、碧。今度の日曜日に遊園地に行かないか?」
「えっ?戸田君と二人で?」
「嫌かい?二人じゃ・・・」
「そんなことないけど・・・お母さんがどう言うか・・・」
「じゃあ、聞いてみてよかったら返事くれよ」
「うん、そうする」
碧は言い出しにくかった。母が心配するだろうと思うからだ。暦はすでに明日が金曜日になろうとしていた。
「ねえ、ママ・・・話があるの」
「なに碧?」
「うん、今度の日曜日に遊園地に行きたいの、行って構わない?」
「いいけど、誰と行くの?」
「クラスの戸田君と」
「戸田君って・・・体操部で一緒の男の子?」
「そう」
「二人で行くの?」
「うん・・・そのつもり」
「・・・ママは心配だわ。その子が悪い子じゃないと信じてるけど、まだ碧は12歳だから・・・」
「そう言うと思った。ママは心配性だから・・・安心して、碧はママが思っているような破目を外す子じゃないから」
「でも・・・男の子でしょ・・・」
「気になるの?」
「そりゃそうよ・・・いくら中一でも、男と女ですもの」
「じゃあ約束するから・・・手を繋ぐ以外はしないって」
「そんな事言われても・・・手も繋いで欲しくないわ」
「帰りに戸田君に家に寄ってもらうよ。ママに会わせるから・・・どんな子か見て欲しいし。なら構わないでしょ?」
「仕方ないわね・・・その日はママの携帯持って出かけて!何かあったら連絡するのよ」
「ありがとう・・・」
夜弥生にも話した。
「お姉ちゃん、日曜日にデートするのよ。ママにも許しをもらったの」
「よかったね。どこに行くの?」
「遊園地って言ってた。どこなんだろう」
「知らないの?お金要るでしょ、少しあげるから持ってゆきなさい」
弥生はそう言って財布から5000円くれた。隼人にしては少ない金額に思えたが、今の碧にとっては十分な金額だった。
「ありがとう、お姉ちゃん。お小遣いから返すから」
「何言ってるの。あげるわよ・・・仲良くしてくるのよ」
弥生は碧の嬉しそうな顔を見るのが一番好きだった。弥生もまた碧のことが大好きな一人だったからだ。
日曜日はよく晴れた日になった。朝早くから起きて碧は何を着てゆこうかと迷っていた。箪笥の中に入っている服を次々と着ては脱ぎを繰り返していた。
「碧、まだ決まらないの?」
弥生は手伝ってあげることにした。
「これにしなさいよ!可愛いじゃない」弥生が手に持ったのはミニのワンピースだった。胸元に可愛い刺繍がしてあり、春らしいピンク色も可愛く感じたが、足をまるっと出すことに抵抗を感じていた。それは隼人の気持がそうさせていた。
「パンツ見えちゃうよ、お姉ちゃん」
「変な子ね・・・レギンス穿けばいいじゃない。貸してあげるから」
「お姉ちゃんのを?ぶかぶかじゃない?」
「失礼なことを言わないの!伸び縮みするから大丈夫なの」
「うん、じゃあそうする」
黒いレギンスを穿いてピンクのワンピースからすらりと伸びた碧の足は細いだけではなく形も綺麗だった。
「似合うわよ碧、とっても可愛い!細い足が羨ましいわ・・・これで胸があったら最高なのに、そこは淋しいわね」
「また言う!いじわる・・・戸田君はそんな事思わないから」
「そうかしら?男の子ってオッパイ気になるって言うよ」
「達也君は違うの!そんなところ見ないから」
「へえ~達也って呼んでるの・・・ばれちゃったね、仲良くなっていることが・・・いいけど、くれぐれも手を繋ぐぐらいまでよ・・・自制心が効かなくなるから、それ以上すると」
「お姉ちゃんもそうなったの?」
「バカ!思い出すだろう・・・」
「小野、お前の父さん外人なのか?」
「違うよ・・・クオーター」
「何だそれ?」
「四分の一外人の血が入っているって言うこと」
「ふ~ん・・・顔はそんなふうには見えないけど、どこの国だ?」
「ロシア」
「目も少し青いぞ」他の男子も覗くようにして見た。
「見ないで!青くなんかないから」
「何言ってるんだ、俺達より少し青いぞ、なあ、みんな?」
そうだ、そうだ、と声がした。
「ねえ、だから何?」怖い顔をして反論すると、戸田が近づいてきて、
「止めろよみんな。仲良くしようよ・・・いじめるやつは僕が許さないぞ!」戸田は明らかにそこに居た男子の中では一番大きな体付きをしていた。碧に話しかけていた何人かはそう言われて、教室を出て行った。
「戸田君・・・ありがとう」
「いいんだよ、あいつら・・・今度変なこと言ったら、やっつけてやるから。安心しろ小野」
なんて頼もしい言葉だろう。男子が嫌いだと思っていたが、隼人の気持としても達也の台詞はかっこよく聞こえた。
家に帰って、今日のことを弥生に話した。
「そんなことがあったの・・・これから大変ね。戸田君って素敵じゃない!もう好きになったんじゃないの?」
「ちょっとね・・・」
「そうそう、絶対に変なことしちゃダメよ。昨日も言ったけど、碧にはまだ早いから・・・」
「解ってるよ・・・お姉ちゃんにしがみつくほうが気持ちいいもん!」
「困った子ね・・・中学一年になったというのに・・・」
弥生はあきれていた。事故が起こる前の碧はこんなふうじゃなかった。自分に甘えて来るなんて考えもしなかったからだ。
いよいよ授業が始まった。真新しい教科書を開いて先生の話を聞いていたが、なんとも退屈に感じる。それはそうだ。碧の脳には隼人の知識が詰まっていたからだ。
これから三年間当たり前の事を聞かされるのかと思ったら憂鬱になってきた。家にあった弥生の使ってない教科書をこっそりと持ってきて、読んでいた。まだ高校の方が学習出来ると考えたからだ。授業中先生に質問されても100%答えを解答できる碧にクラスのみんなは少しずつ敬意を持つようになってきた。
「小野は頭いいぞ」そう評判になった。清水は姉の弥生もそこそこ勉強が出来ていたから家系だろうと思えたが、それにしても優秀すぎる。
一月ほどして部活の締め切りになってきた頃、どうしようかと迷っていた碧に清水は自分が受け持ちをしている体操部への入部を勧めてきた。そこにはクラスの戸田も入部していた。身体の大きい彼は自慢の筋力を生かしたいと思っていた。逆に碧は小さな身体を発達させたいと思っていたから、体操はその役に立つと、入部を決めた。
「達也君、これから一緒ね。よろしくね」
「碧、嬉しいよお前と一緒に出来るなんて」
淡い気持ちではあったが、達也は碧のことを気にし始めていた。小さくて可愛いと思う反面恐ろしく頭のいいところも気に入っていた。それは達也がクラスで二番目、いや学年で二番目の成績だったからだ。お互いはよく話し合い楽しい時間が碧の学校生活を楽しみなものに変えていた。
直ぐにクラスでは二人が出来ていると評判になってしまった。男子から「ピュー」とヤラシイ口笛を吹かれる。女子からも嫉妬の視線を感じる。達也はどんなときも碧には優しかった。隼人としての気持ちの中に達也なら受け入れても構わないと言う変化が訪れていた。
「なあ、碧。今度の日曜日に遊園地に行かないか?」
「えっ?戸田君と二人で?」
「嫌かい?二人じゃ・・・」
「そんなことないけど・・・お母さんがどう言うか・・・」
「じゃあ、聞いてみてよかったら返事くれよ」
「うん、そうする」
碧は言い出しにくかった。母が心配するだろうと思うからだ。暦はすでに明日が金曜日になろうとしていた。
「ねえ、ママ・・・話があるの」
「なに碧?」
「うん、今度の日曜日に遊園地に行きたいの、行って構わない?」
「いいけど、誰と行くの?」
「クラスの戸田君と」
「戸田君って・・・体操部で一緒の男の子?」
「そう」
「二人で行くの?」
「うん・・・そのつもり」
「・・・ママは心配だわ。その子が悪い子じゃないと信じてるけど、まだ碧は12歳だから・・・」
「そう言うと思った。ママは心配性だから・・・安心して、碧はママが思っているような破目を外す子じゃないから」
「でも・・・男の子でしょ・・・」
「気になるの?」
「そりゃそうよ・・・いくら中一でも、男と女ですもの」
「じゃあ約束するから・・・手を繋ぐ以外はしないって」
「そんな事言われても・・・手も繋いで欲しくないわ」
「帰りに戸田君に家に寄ってもらうよ。ママに会わせるから・・・どんな子か見て欲しいし。なら構わないでしょ?」
「仕方ないわね・・・その日はママの携帯持って出かけて!何かあったら連絡するのよ」
「ありがとう・・・」
夜弥生にも話した。
「お姉ちゃん、日曜日にデートするのよ。ママにも許しをもらったの」
「よかったね。どこに行くの?」
「遊園地って言ってた。どこなんだろう」
「知らないの?お金要るでしょ、少しあげるから持ってゆきなさい」
弥生はそう言って財布から5000円くれた。隼人にしては少ない金額に思えたが、今の碧にとっては十分な金額だった。
「ありがとう、お姉ちゃん。お小遣いから返すから」
「何言ってるの。あげるわよ・・・仲良くしてくるのよ」
弥生は碧の嬉しそうな顔を見るのが一番好きだった。弥生もまた碧のことが大好きな一人だったからだ。
日曜日はよく晴れた日になった。朝早くから起きて碧は何を着てゆこうかと迷っていた。箪笥の中に入っている服を次々と着ては脱ぎを繰り返していた。
「碧、まだ決まらないの?」
弥生は手伝ってあげることにした。
「これにしなさいよ!可愛いじゃない」弥生が手に持ったのはミニのワンピースだった。胸元に可愛い刺繍がしてあり、春らしいピンク色も可愛く感じたが、足をまるっと出すことに抵抗を感じていた。それは隼人の気持がそうさせていた。
「パンツ見えちゃうよ、お姉ちゃん」
「変な子ね・・・レギンス穿けばいいじゃない。貸してあげるから」
「お姉ちゃんのを?ぶかぶかじゃない?」
「失礼なことを言わないの!伸び縮みするから大丈夫なの」
「うん、じゃあそうする」
黒いレギンスを穿いてピンクのワンピースからすらりと伸びた碧の足は細いだけではなく形も綺麗だった。
「似合うわよ碧、とっても可愛い!細い足が羨ましいわ・・・これで胸があったら最高なのに、そこは淋しいわね」
「また言う!いじわる・・・戸田君はそんな事思わないから」
「そうかしら?男の子ってオッパイ気になるって言うよ」
「達也君は違うの!そんなところ見ないから」
「へえ~達也って呼んでるの・・・ばれちゃったね、仲良くなっていることが・・・いいけど、くれぐれも手を繋ぐぐらいまでよ・・・自制心が効かなくなるから、それ以上すると」
「お姉ちゃんもそうなったの?」
「バカ!思い出すだろう・・・」
作品名:「神のいたずら」 第三章 優との再会 作家名:てっしゅう