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窓の中

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いつも見ていた空は青く澄んだ空だった。


きっと窓の向こうにもずっと広がっていて先が見えないほどに続いていることを想像していた。
ここから見る空はずっとずっと四角いままで、いつかを夢見るほどには焦がれていない空は変わらなかった。

ただ、空を見るだびに焦がれる思いは他にあって、言葉にするにはまとまらないそれをいつしか手紙として書き留めるのが空を見ることと同じくらいの日課になった。


【今日も見る空は青く澄んでいて、聞こえる音は静かな命の音だけです。いつまでも絶え間なく流れる命のめぐる音は静かな部屋に響きます。きっとあなたの声もこの部屋のように静かな澄んだ空のような声なのではと思っています。いつかその声を聴くことが出来たら、そう考えてみては夢のような事だと我に返り、恥ずかしさで眠りにつく毎日です。それでも、ただ一つだけ夢に見るものは、今日も同じくあなたのたたずむ姿です。】




本当に偶然で奇跡で必然のように、美しい頃の窓の外で見つけた人への手紙。
渡すことの無い、己の我侭だけを欲望だけを書き連ねた醜い手紙。
書き出したのは、春のこと。



作品名:窓の中 作家名:榊 優乃