夜のビデオカメラ
エピローグ
紗英さんと話したあの後、僕の部屋が荒らされる事はなくなった。そして、いつも通りの気持ちのいい朝を迎える事ができた。
あることが気になった僕は実家に電話した。
というのも、あの陶器は元々父さんの持ち物だったからだ。
父さんによると、父さんの父――つまり僕の祖父が昔友人から譲って貰ったのだと言う。僕の考えだと、その友人というのが、紗英さんのおじいさんだ。確定はできないけれど。
友人であったであろう僕の祖父と紗英さんのおじいさん。そしてその孫の僕と彼女が同じ大学で同じ学部。
これが運命と言うのか、それともただ世間が狭いだけなのか。
どちらにせよ、僕は紗英さんと会う事ができた。
そして今から彼女のおじいさんのお墓に向かう。大切に包んだ陶器を持って。
「おい、凌。もう行くぞ」
部屋のドアから啓一の声。僕はドアを開けた。
「うん。早く行こう」
僕たちは車に乗る。
「今日、伝えるんだろ? お孫さんを僕にくださいって」
「そうだね、ついでに頼んでおこうか」
「おいおい、今度はおじいさんの霊が出ても俺を呼ぶなよ?」
「冗談だよ。紗英さんにしっかり伝える」
「幸運を」
そんな会話をしながら到着したお墓には、すでに紗英さんがおじいさんのお墓の前にいた。
晴天に照らされた彼女が立ち上がり、ぎこちなくお辞儀をする。僕もつられてお辞儀をした。
顔を上げた彼女はややずれた眼鏡を直し、にっこり笑う。その笑顔はこれまでの中で一番美しかった。
僕も応えるように笑う。
この後、僕は紗英さんのおじいさんに手を合わせ、彼女に思いを伝える訳だが、それはまた別の話。