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夜のビデオカメラ

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プロローグ


突然だが、あなたは自分が夜寝ている姿をビデオカメラで撮影した事はあるか。
大多数の人は、そんな意味のない事をした覚えは過去にないだろう。

しかし、仮に撮影しなければならない状況に陥り、その映像を見なければならないとしたら、あなたは見る事ができるか。そこに、この世の物とは思えない何かが映っていたら、あなたはどうするだろうか。

僕は今、まさにそれを考えている。

僕の目の前に丸い机に置かれたリモコン。
このリモコンから発せられた信号は、薄っぺらいテレビと繋がったDVDレコーダーに届く。そしてすでに再生状態にあるビデオカメラの映像をテレビに映し出すのだ。

リモコンの『入力切り替え』と書かれたボタンを一度押せば、この動作が始まる。
それは未知の扉を開く合図だ。

僕はリモコンを手に取った。

瞬間、背中が凍り付く。
背骨を直接捕まれたような感覚だった。
ゆっくり首を回して後ろを見る。

そこには今朝から変わらず、僕の服が散乱していた。

肩を撫で下ろす。

気を取り直しリモコンをテレビに構えた。

『入力切り替え』と書かれたボタンに親指をかざしたところで指が止まる。

駄目だ、押せない......。

「やっぱり明日にしよう」

僕の頭で僕が囁く。

「嫌だ。あんな思いはもうしたくない」

そうだ。押さなくてはならない。
押さないと何も解決しないじゃないか。
何が起こっているのか確かめなくてはならない、自分自身の目で。

心臓が高鳴る。

押せ。
押すんだ。
押せ!
押せ!!

押した。
テレビの画面が切り替わろうとする。
その一瞬はスローだった。
〇・二秒を無数に切り刻み、僕の脳が走馬灯のように数日前の出来事を鮮明に思い出させた。
作品名:夜のビデオカメラ 作家名:うみしお