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「お話(仮)」

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 しかし、そんなクリスの問いには耳もくれず、部屋の真ん中で高らかと両手を掲げるスキュラ。
 と、その目にアンバーの姿が映る。
「ところで、お主は何者だ?」
「お待ちしておりました。スキュラ軍師殿」
 すると、スキュラはまたもや曲刀を鞘ごと引き抜き、今度はアンバーに迫る。
「我が名を知っておるという事は……」
「もう。勘違いしないで。アナタ、それでよく軍師を務められたわね」
 先程と全く同じ反応に、呆れ顔でクリスが仲裁に入る。
「では、こやつもゴルゴンゾーラの使者の一人か?」
 スキュラの問いに、アンバーは改めて彼女に向き直り、深々と一礼して言った。
「ご挨拶が遅れました。私はアンバー。あなたをお迎えに上がりました『牙』の長でございます」
「え、そうだったの?」
 驚くクリスのすぐ横で微笑むアンバー。
 と、その胸元で電子音が鳴った。
 本社からの連絡だろうか。さして気を取られる様子もなく、彼は部屋の隅へ移動しながらネクタイについた小型無線機のアンテナを立てた。そして――。
「……誘拐? お嬢様が!?」
 その声が静かな部屋に響く。
「犯人からの通信が? ですが、お嬢様なら隣室で……。はい、すぐに確認して参ります」
「ど、どうしたの? まさか、ビアンカちゃん……」
 しかし、そんなクリスの言葉に耳を傾けることなく、アンバーは早足で部屋を後にし、数十秒後、戻ってくるなり穏やかな口調で言った。
「ご安心下さい。お嬢様はご無事です。今後は、このような悪戯があってもお気になさらぬよう」
 そこで彼は無線の電源を切った。
「悪戯で良かったわね。誘拐って聞いた時、アタシびっくりしちゃったわ」
「嘘も方便ですよ、クリスさん」
 アンバーが取り出した一枚の紙切れ。そこには、乱雑な字でこう書かれていた。

《ビアンカ・ゴルゴンゾーラは、紅真珠もろとも、天下の盗賊団『ケモノ』がいただいた》

「ちょ、ちょっとコレって……」
 月明かりがカーテンに薄紅色の影を落とす中、クリス達三人は揃って顔を見合わせた。

                   〜To be continued〜
作品名:「お話(仮)」 作家名:樹樹