小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

「お話(仮)」

INDEX|101ページ/115ページ|

次のページ前のページ
 

第10話


「シヴァ……ちゃん……?」
 雪よりも白く、そして冷たい頬。
 クリスは目を伏せた。
「ふーん。さすがのキミでも泣くんだ。無理ないか。大好きなシヴァが死んじゃったんだもんね」
 まるで能面のような顔で、クリスとシヴァを交互に見下ろすノア。
 その左耳で、つい先刻までシヴァがしていた真珠のピアスが揺れる。
(クリス、私はお前に出会えたことが嬉しい)
 彼女の遺した言葉がクリスの胸に突き刺さる。
「……有難う。ゴメンなさい。あの時、アナタを守るって約束したのにね」

 ――少しだけ、未来を教えてあげよう。



「安心して。何があっても、アタシがシヴァちゃんを守るわ」
「?」
 突然の言葉にシヴァは一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐに顔を反らして呟く。
「お前は“ケモノ”を……奴を甘く見過ぎている。引き返すなら今しかない」
 あの騒動から一夜。
 謎の台詞を吐いて去ったセトの挑発に乗るかの如く、クリス達は“紅い獣”の居城を目指した。
 そして、太陽が空の頂上で輝く頃、二人の眼前に現れた巨大な煉瓦色の建造物。
「さすがに強行突破はマズイかしらね?」
 入口扉に彫られた動物のレリーフをなぞってクリスが肩をすくめる。
 手の平を通してざわめきを感じる。この奥に敵が待ち構えているのは間違いなさそうだ。
「ノアに小手先のごまかしは通用しない。もう一度言う。引き返すなら今しかないぞ」
「アタシも目的があってここへ来てるの。早く、グレーシャちゃんの呪いも解いてあげなきゃね」
 グレーシャは町に残った。
 その理由について彼女は何も語らなかったが、クリスには察しがついた。
「今更引き返せないわ。シヴァちゃん、覚悟はいいかしら?」
 愛鎌『ローズ・マリー』を構え、クリスはシヴァに問うた。
「勿論だ」
 そして二人は呼吸を揃え、扉を一息に蹴破った。

“強行突破!”
作品名:「お話(仮)」 作家名:樹樹