「山」 にまつわる小品集 その参
知られざる真実 (セカイ系)
もっと早くに気付くべきであった。兆候はあったのだ。
南方に棲息している巨大クラゲが山陰沖から新潟にかけて出現した時に。『越前クラゲ』と名付けられたために、問題の本質が見えなくなってしまったのだ。いや、それ以前にも熱帯でしか見られなかった動植物がすでに多く見られていたはずだ。
すべては、『温暖化』という言葉でその重大な問題が隠されてきた。
地球物理学を研究してきたお茶の水博士は、助手のアトムの協力のもと、数台のコンピューターをつないでそれらのシミュレーションを描いた。
それは、三陸沖の地殻変動の原因の一つとなっていることを示していた。
またそれは、集中豪雨と大型台風の遅い速度とあまりにも多い雨量にも関係していたのである。
お茶の水博士は世界中にいる知己の研究者と連絡を取り、河口湖畔の別荘に集結することを促した。コンピューターの盗聴を恐れたからである。特に政府による盗聴を。
作品名:「山」 にまつわる小品集 その参 作家名:健忘真実