「山」 にまつわる小品集 その参
大丈夫、歩けるから、と歩いているうちに足の痛みはひどくなり、ロックガーデンでは後ろ向きになって恐る恐る足を下ろしていく、という状態になってしまいました。
「足、どうかしはったんですか?」
という声に顔を上げると、あなたと鎌田さんが見下ろしていらした。そして私のソックスを下ろして足首をご覧になると
「僕が背負いましょう。これじゃぁ無理ですよ」と。
長身のあなたが私を背負い安全の為にザイルでふたりを固定し、小柄でもがっしりした体格の鎌田さんが、あなたの荷物をも担いで付き添ってくださいました。
私は顔がほてって仕方なかったのですが。
大谷茶屋の下に車を置いていらしたので、家まで送ってくださいましたね。
その時初めて、ロッククライミングのことを知りました。
一般ルートからはずれて川沿いに遡行していくと大きな岩場があること、その日はたまたまそこで練習していらしたこと、など。
作品名:「山」 にまつわる小品集 その参 作家名:健忘真実