「山」 にまつわる小品集 その参
淳史さん、有川浩さんの小説『阪急電車』、ご存知ですか? 映画で話題にもなっていたので、きっとご存知だと思います。
ヒロインと同じように、私も白いドレスを着て出席しようか、式場も小説と同じ「宝塚ホテル」なんですから。
でも私には、とても実行に移すだけの勇気はありませんでした。
小説の舞台は今津線。
私が利用しているのはいつも混雑している宝塚線。多くの、しかも知っている人に出会う確率の高い路線では、とてもとても。でも、私の気持ちはヒロインと全く同じでした。
淳史さん、覚えていらっしゃいますか? 私たちの出会いの日を。
台風がそれまでの暑さを払しょくし、ツクツクホウシがその所在を示すかの如く時々名残惜しげに鳴いていました。5年前のことです。
香奈と私は、有馬から六甲山頂を経由してお多福山からロックガーデンに向けて下っている時、泥に足を滑らせて私は転んでしまい、足を捻挫しました。
作品名:「山」 にまつわる小品集 その参 作家名:健忘真実