「山」 にまつわる小品集 その参
鹿 (ミステリー)
国道19号線を走る車から御嶽山方面を眺めると、山はすっぽりと雲に包まれていた。
御嶽山の山裾に差し掛かると、ポツポツと雨がフロントガラスに模様を作り出し、開田高原からロープウェー方面に向かう頃には、強く叩き始めた。
ワイパーがせわしなく左へ右へ。続くヘアピンカーブでハンドルもせわしなく切り返す。
視界が悪い中、前方から迫って来るヘッドライトに気付いた時には、すでに避けようがなかった。
キキーッ、ゴッゴッガガガガ
ブレーキを踏みながらハンドルを左に切った。そしてすぐに右へ。
幸いスピードは出しておらず、車体は山肌にこすりつけただけで止まった。
すぐにルームミラーに目をやる。
?
そしてサイドミラーへ。
あわてて車から飛び出し、ガードレールのない道路下を覗き込んだ。
車輪を上に向けた車が目に入った。
怖くなり、自分の車に戻るやターンできる場所まで行くと、引き返していった。
作品名:「山」 にまつわる小品集 その参 作家名:健忘真実