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見えない

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「そうか!お前はあの祓い屋の息子か!」
 今度は残りの二人が目を丸くする番だった。森主は標的を馨に変える。気付かなかった彼に、手が伸ばされる。梓が「あ」と気付いたときにはもう遅く、森主の手は馨の髪を引っつかんでいた。状況の読めない馨の頭に、その痛みだけが走る。
「い・・・ッ!」
 かろうじて声をあげた馨は、てんで方向違いに手を伸ばす。が、当然のことながら無駄な抵抗に終わる。助けなければと思っている梓だが、その勇気がなく足が止まる。
 そんな彼女の様子を見て、森主は笑う。しかし梓ではなく、髪を引っつかんでいる馨に話しかけた。
「いい事を教えてやろう」
 ニィッと不気味に笑った森主は、馨の耳元で囁いた。
「俺が呪ったからだ。お前の目も耳も使い物にならないのはな」
「な・・・っ」
「『なんで』って?簡単な話だ。俺を封印したのがお前の親父だからな」
 そこまで言われて馨は思い出した。父は妖怪の殲滅と封印が専売特許の祓い屋である。そんな父の下につく見習いの多くは、その両方の力を得るために入門してくる。しかし、父はある時を境に封印だけは、限られた人物にしか教えられなかった。その共通点は、家族を持たない実力者だ。ちなみに馨の言っていた「師匠」とは、父親のことだ。訓練中に呼んでいたのが定着してしまったのである。
 話を戻すと、父が弟子を選ぶようになったのは、森主が自分に呪いをかけたのがきっかけ。
 抵抗もしなくなった馨を、不思議そうな顔でつまらなさそうな表情をする。しかし次の瞬間、見えないはずの腕を掴み、それを軸に蹴りをかました。その足は見事に森主の顔面にヒットする。油断していたのが原因だ。
 解放された馨は、綺麗なフォームで着地する。枯葉の舞う位置に森主がいるとわかった彼は、崩れた髪形を戻すようにぶんぶんと首を振った。
「悪いけど、気配ってのはわかるもんだぜ?それだけ邪気だしてりゃな」
 強がる彼に、梓が小声で謝罪する。
「悪い、助けなくて」
「一般人のお前が気にするな。それはいいから、情報を頼む」
 そういわれた彼女は、森主に目を向けた。
 顔を押さえていた森主が、ゆらりと手を下ろす。現れた顔を見て、梓は言葉を失った。
 その顔は、あまりにもまがまがしい顔で、人の姿を保っているのに化け物と対面したような恐怖心を覚えた。いや、実際化け物に近い存在だが。
 森主は梓と馨を同時に視界に入れた。
作品名:見えない 作家名:神田 諷