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アフタヌーンティ

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「ほんとに助かるよ」
 吉原さんは熱すぎる紅茶に息を吹きかけながら言った。
「え?」
「あいつがね、美樹ちゃんとの会話をとても楽しそうに話すんだ」
「ふーん」
「『ねぇ、あなた。もう一人女の子が欲しいわ』って言うんだ」

 何をさらっととんでもないことを声に出しているのだろう。
 一応、私だって年頃の女の子のつもりなんだけど。
 私が考え過ぎなのかな?

「それで?」
「『私も美樹ちゃんのような女の子が欲しいの』だってさ」

 そんなことを面と向かって言われても、どんな顔でどんな反応をすればいいのか、てんでわからなかった。
 嬉しいような、恥かしいような、なんだかムズガユイ感じ。

「私も、シンジ君みたいなかわいい男の子が欲しいなぁ」
 返答に困った私がやっとの思いで捻りだした答えを聞いて、吉原さんの目の色が変わった。
 その目は、お父さんの目とそっくりな気がした。

 吉原さんの顔が徐々に緩んでゆく。
 きっと、シンジ君を『かわいい』と言ったことに反応したんだと思う。

「美樹ちゃんは恋人はいないのかい?」
「うん。今のところ男子に興味ないの」
 吉原さんの目が、一瞬だけ大きく開いた。
 私の答えが意外だったみたいだ。
「美樹ちゃんかわいいのに、勿体無い」
「今の言葉、お父さんや彩さんが聞いたらなんて思うかしら?」
「おいおい、冗談きついよ。……で、ほんとにいないのかい?」
 吉原さんはそう言ってティーカップに口をつけたけれど、紅茶はまだ熱かったみたいだ。
 吉原さんがティーカップをテーブルに置くのを待って、私は話を続けた。

「だってさぁ、男子って、女のコと寝ることしか考えてないんだから。女の裸のことしか頭にないのよ? サイテーよ」
「そいつは厳しいなぁ」
 吉原さんは苦笑している。

「それに……」
 私は途中で言葉を飲み込んだ。
「それに?」
 吉原さんは続きを期待しているのか、すぐに聞き返してきた。

作品名:アフタヌーンティ 作家名:村崎右近