アフタヌーンティ
「眠ったみたいだ」
二十分ぐらい過ぎてから、吉原さんはそ〜っと隣の部屋から戻ってきた。その表情には疲れが見えていたけれど、それがかえって幸せそうに思えた。
「何か飲み物を出すよ」
そう言って、吉原さんはそのままキッチンへ行こうとする。
「吉原さんは座っててよ、私がやるから」
私は吉原さんを引きとめた。
私がここへやって来たとき、シンジ君は泣き喚いていた。お腹が空いて、それで泣いていたようだった。
そのとき吉原さんは台所でミルクを作っていて、都合よく訪ねてきた私がシンジ君をあやし、なだめ、たった今、そのドタバタが終わって一息ついたところだ。
「いつもの紅茶でいいんだよね?」
キッチンには備え付けの小さな引き出しがある。
私は吉原さんの返事を待たずに、上から二番目を開ける。なにせ半年近くも通い詰めているものだから、キッチンのどこに何があるのかほとんど知っている。二番目の引き出しには、紅茶の葉が入っているんだ。
引き出しの中には見慣れない葉が入っていた。
それには『Darjeeling』と銘打ってある。
「それか? 間違って買って来てしまったんだ。種類がまだ覚えきれなくて」
彩さんはいつも『English Garden』を好んで飲む。
こういうものにこだわりを持つ人にとって、銘柄を間違われることはとても許しがたいことみたい。
私の場合、両親ともそうなのだから、身に染みて知っている。
偶然にもこのダージリンティーは、お父さんが好んで飲む紅茶と同じだった。
「間違えて買ってきた時、怒られなかった?」
「……ちょっとな」
紅茶を飲もうとして口を付けたけれど、熱すぎて口に含むこともできなかった。
二十分ぐらい過ぎてから、吉原さんはそ〜っと隣の部屋から戻ってきた。その表情には疲れが見えていたけれど、それがかえって幸せそうに思えた。
「何か飲み物を出すよ」
そう言って、吉原さんはそのままキッチンへ行こうとする。
「吉原さんは座っててよ、私がやるから」
私は吉原さんを引きとめた。
私がここへやって来たとき、シンジ君は泣き喚いていた。お腹が空いて、それで泣いていたようだった。
そのとき吉原さんは台所でミルクを作っていて、都合よく訪ねてきた私がシンジ君をあやし、なだめ、たった今、そのドタバタが終わって一息ついたところだ。
「いつもの紅茶でいいんだよね?」
キッチンには備え付けの小さな引き出しがある。
私は吉原さんの返事を待たずに、上から二番目を開ける。なにせ半年近くも通い詰めているものだから、キッチンのどこに何があるのかほとんど知っている。二番目の引き出しには、紅茶の葉が入っているんだ。
引き出しの中には見慣れない葉が入っていた。
それには『Darjeeling』と銘打ってある。
「それか? 間違って買って来てしまったんだ。種類がまだ覚えきれなくて」
彩さんはいつも『English Garden』を好んで飲む。
こういうものにこだわりを持つ人にとって、銘柄を間違われることはとても許しがたいことみたい。
私の場合、両親ともそうなのだから、身に染みて知っている。
偶然にもこのダージリンティーは、お父さんが好んで飲む紅茶と同じだった。
「間違えて買ってきた時、怒られなかった?」
「……ちょっとな」
紅茶を飲もうとして口を付けたけれど、熱すぎて口に含むこともできなかった。