太陽と素足の君
と走ってくると、俺の前まで来て肩で息をしながら言った
「はい!これ、バスの中で開けてね」
と手渡されたのは、彼女のスケッチブックと青い包みだった。
「これって『プシューッ』
俺が口を開いたのとほぼ同時にバスが来た。
「ほら、来たから。早く乗って」
「千尋ちゃん。またね」
「千尋。俺「修。お前、別れ惜しいのは分かるけどよ。早くしねぇと置いてくぞ」
「あ、あぁ」
巧に促されて俺はバスに乗った。
「「「ありがとうございました」」」
俺たちが座席の窓から言うと、手を振る二人を残してバスは走り出した。
「おい、修。後ろ」
「えっ」
巧に言われて後ろを振り向くと、千尋が走ってくるのが見えた。
『ありがと、大好き』
と、口が動いているのが見える。しかし、それも徐々に遠ざかって行き、とうとうそれも見えなくなった。
「なあ、修。千尋ちゃんに貰ったもの開けて見ようぜ」
和彦が俺のわき腹を突きながら言った。
「あぁ、あれか。帰ったら俺一人で見る」
俺がそう言うと、巧が
「俺たちがいなかったら、お前千尋ちゃんにまだ告白できないでいたんだぜ?俺たちにも見る権利ぐらいはあるだろ」
と、催促するように言った。
「しゃあねぇな。じゃあ、見せてやるよ」
内心『ムードも減ったくれも無い奴らだな』と思いながら、千尋のスケッチブックを開けた。そこには全てのページに俺と千尋が描かれていた。花火をする二人・海で遊ぶ二人。そして、一番最後のページには、二人が結婚式を挙げている絵が描かれていた。それから、青い包みには白と桜色の貝殻が二つ入っていた。
「何だよ。惚気やがって」
「でも、千尋ちゃんらしいよな。こういう演出」
和彦と巧が口々に言った。
「で、また此処に行くのか?修」
と言う巧の質問に
「ああ。今度行くときは、正式に千尋を貰いに行く時だな」
「うわ、惚気!修、お前はそんな奴だったのか」
と、和彦が騒いだ。
そんな俺たちを乗せたバスは、目的の駅へと走っていくのだった。地元に戻り、夏休みが明けた頃には、俺と千尋の噂は学年中に広がっていたとさ。
END