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キジン×ヘンジン×サツジン

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問1 フーダニット・ハウダニット・ワイダニット



 ようやく山荘の姿が、木の葉の隙間から見え、僕は安堵した。
 道路のわきに原付を駐車し、獣道のような山道を歩くこと三十分。
 暑い日ざし、歩きづらい道、顔にぶつかる木の枝。
 昼の真っ只中に、ひたすら歩く。
 途中で何度引き返そうと考えたかわからない。
「まぁ、こんな道だもんなぁ」
 一人、そんな風につぶやいた。
 山荘の姿が見えてから、またしばらく歩く。何回か転びそうになりつつ、やっとのことで山荘の前に着いた。
 目の前には大きな谷。山荘とこちらは、太いロープで吊るされた橋がひとつ架かっている。
 山荘は横長で、屋根はよくある三角のものだ。外装が洋風なせいか、小さめの洋館のように見える。
 僕は吊橋を渡り始めた。
 僕の正面には、山荘の玄関がちょうどくる形になる。
 玄関の前に立ち、インターホンを探すが、ついていない。
「うーん、どうしたもんか」
 腕を組み、どうしたものかと思い、立ち尽くす。
 すると、
「横についている鐘を引くんですよ」
 突然後ろから声がかけられる。
 振り向くと、そこには中肉中背の中年がいた。
 気の弱そうな雰囲気を持っており、メガネを掛けている。
 ワイシャツとスーツのズボンを着ているが、ネクタイは外していた。
 最近流行りのクールビズというやつだろうか。
 なんにしても、こんな山奥にいるなんて怪しすぎる。
 だからまず、こう言った。
「えーと、あなたは?」
 この不審者め、と言外に伝えかねない表情で言ってやった。
 ………………無言。
「あ、あれ? ぼ、僕、質問したんですが……?」
 何かしら返答があると思っていた僕は、うろたえてしまう。
 そんな僕の様子を見て中年の彼はクスリと笑い、
「……そんなに不信がられても困りますよ。なんと応えても怪しまれそうで。それに、えーと、きみ、でいいかな? きみも私からしたら充分怪しいですよ?」
 そうか、言われてみればその通りである。
 こんな山奥に突然大学生が足を踏み入れれば怪しいのは間違いない。
「――あ、それと、怪しいって言った理由わかってますよね?」
 確認するかのように尋ねられる。
「ハイ。さすがにこんな山奥、管理者の方以外は普通来ないからですよね?」
 さすがにそのくらいのことはわかる。
 自信を持って答えるが、
「いえ、その、それもあるんですが、どちらかと言うとその手にもっているもののせいで怪しさ満点と言いますか……」
 どうやら彼は不服のようだ。
 手に持っている物を確認してみる。
「えっと、これのどこが怪しいんですか?」
「ジュラルミンケースを持ち歩いてる奴のどこが怪しくないんですか!?」
「ジュラルミンケースの何が悪い!」
 ………………またも、無言。
「ごめんなさい。怪しいですね」
「いえ、私のほうこそ興奮してしまって」
 いい年したおっさんと、二十歳くらい青年が二人して頭を下げあう。
 しかも、山奥の洋館の前で。
 シュールさ満点だった。
 彼もそんなことを感じたかどうかはわからないが、気を取り直して自己紹介をされる。
「私は四方八 方(よもや あたる)といいます。職業は一応探偵です」
 そういって四方八さんは名刺を差し出した。