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Stern

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 きらきら光るお空のお星さま。
 幾千幾万の輝き。考えられないほどはるかかなたの考えられないほどはるか昔の光。
 そして、そのお空の真ん中にはまんまるのお月さま。うさぎたちが餅つきをしている姿がはっきりと見える。
 お空全部から感じられるのは生命の煌き。
 生きている証拠。
「きれいだね」
 わたしはとなりに座っている、とてもとてもだいすきな人に話しかける。すると、かれはとてもとても優しい笑顔で私を見つめてくれる。
 しあわせでたいせつな時間。
 わたしは生きている。


 
 ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ。
 目の前を通り過ぎていくたくさんのくろい塊。
 じりじりじりじりじりじりじりじり。
 どんなにお日様の光が強くて、どんなに暑くても、せっせせっせといっしょうけんめいに働いている。
 公園のすみっこでぴしっと一列にならんでこうしんして、今日のごはんをさがしてる。長い長い長い行列。
「なにしてんだ。こんなところで。日射病になるぞ」
 わたしの真上から声が降ってくる。わたしの一番だいすきな声。
「ありさんを見てたの」
 わたしはずうっと見てたありさんたちを指さしながら声の方へ振り向く。そこには少し不思議そうな顔をした彼がいた。
「ありさん・・・・・・・・・。見てて面白いか?」
「うん」
「・・・・・・・・そうか。俺はこういうの見ると踏みたくなったけど」
「ええ!なにそれ、かわいそう」
「小学生のときの話だよ。列の真ん中を踏むと、後ろの蟻たちが戸惑うんだよな」
「ちょっと見てみたいけど、やっぱりかわいそう」
「一応言っておくが、今はやってないぞ」
 そう言って、かれはわたしの隣にしゃがみこんで、綺麗な目でわたしを見た。
「それよりも、あんまりどっかにふらふらとうろつくなよ。いつかどっかで迷子になるぞ」
「そんなことないよ」
 だっていつもどこへ行ってもかれはわたしを見つけてくれる。まるで、赤い糸をたどって。
「探す方の身にもなってくれよ。大変なんだから。今日もこんな炎天下の中を走り回ったんだよ。それに最近物騒なんだから、誰かに誘拐されるかもしれないぞ」
「うん、ごめんね。心配してくれて」
「それにしても暑いな。どっか行くか」
「それじゃあね。あそこのお店のパフェ食べにいこ」
「あそこの店ってどこだ。俺ので五件ほどでくるんだけど」
「学校の近くにあるお店の」
「二件になった。もう一声」
「おいしくておおきいほう」
「了解。それじゃ行きますか。お姫様」
 かれは立ち上がってわたしに手をさしのべる。おおきなてのひら。
 わたしはその手をにぎってたちあがろうとした。だけど、
「うわあ」
 それとどうじに私の頭がくらっとして、体がふらっとした。
「あぶなっ」
 ギリギリありさんたちをふまないところで、かれがわたしをうけとめてくれた。
「そりゃあ、この炎天下の中ずっとしゃがみ続けてたらこうなるか。大丈夫か」
「うん、だいじょうぶ」
 わたしはかれのおおきな体にだきとめられていた。かれのしんぞうの音が聞こえる。
「だけど、もうちょっとこのままでいさせて」
 しあわせをかんじていたいから。


作品名:Stern 作家名:砌 朱依