彼方へ…
「妙に蒸し蒸しするよね。」
その日は１０月に入ったというのに、何だか汗の出る日だった。
「えっ、そうかな。そうでもないけど。」
夫はそれに対して笑ってそう答えた。普段は彼のほうが暑がりで、クーラーの設定温度のケンカは日常茶飯事。まだ、新婚の部類に入るのに両手に余る。彼がいない間に設定温度を２℃上げるのが私のこの夏の日課だった。
おかしいな…そう言えば身体も重いし気分も悪い。それに２〜３日前から妙に胸の張る感じもする。何か病気？それとも…
私はそう考えて、ふっとほくそ笑んだ。
そういえばかなりきてなかった。元々まともじゃなかったから、あまり気に留めていなかったけれど、そういうのも考えに入れといた方がいいのかも…明日、病院にいってみるかな。
そう思いながら、寝る前に行っとかなきゃとトイレに立った。そしたら、出血していた。
（何だ、違ってたのか…）
私はホッとしたようながっかりしたような気分でそこを出ようとした。
その時−
「ママ、マー君を助けて…お願い。」
小さな男の子の声がした。
「だ、誰？！」
私は辺りを見回してそう叫んだ。誰もいるはずなんてないのに。私たちは結婚したばかり。私も彼も初婚で、ママと呼ばれるような子供に覚えはないから。
でも、もう一度声がした。
「ねぇ、今ならまだ間に合うんだよ…早く！…お願いだから…ママ、マー君…マー君だけは助けて！」
よくよく考えてみると、その声は耳からではなく、頭の中から聞こえてきていた。そう気が付いた私は震えだし、その震えは止まらなくなった。
「あなた！助けて！！」
そうやって声に出して助けを求めたものの、夫にこの事を上手く説明できる自身はなかった。ましてや、これから病院に駆けつけたとして、医師に納得のできる説明ができるとは到底思えなかった。
それでも私は、その小さな声を信じた。
私は、私の切羽詰った助けを求める声に、何事かと慌てて寝室から駆けつけた夫を見た途端ホッとしてへなへなと崩れた。彼はそれを寸でのところで抱えると、心配そうに、
「どうした？何があったんだ？もしかして変な奴でも…」
「ううん、違うの。血が出てるの…で、赤ちゃんが危ないの…でも、今なら間に合うって…」
私はひどく混乱していて、泣きながら思いつくまま今の危機を夫に伝えた。
そんな取り留めのない説明に、彼はうんうんと頷いて、
その日は１０月に入ったというのに、何だか汗の出る日だった。
「えっ、そうかな。そうでもないけど。」
夫はそれに対して笑ってそう答えた。普段は彼のほうが暑がりで、クーラーの設定温度のケンカは日常茶飯事。まだ、新婚の部類に入るのに両手に余る。彼がいない間に設定温度を２℃上げるのが私のこの夏の日課だった。
おかしいな…そう言えば身体も重いし気分も悪い。それに２〜３日前から妙に胸の張る感じもする。何か病気？それとも…
私はそう考えて、ふっとほくそ笑んだ。
そういえばかなりきてなかった。元々まともじゃなかったから、あまり気に留めていなかったけれど、そういうのも考えに入れといた方がいいのかも…明日、病院にいってみるかな。
そう思いながら、寝る前に行っとかなきゃとトイレに立った。そしたら、出血していた。
（何だ、違ってたのか…）
私はホッとしたようながっかりしたような気分でそこを出ようとした。
その時−
「ママ、マー君を助けて…お願い。」
小さな男の子の声がした。
「だ、誰？！」
私は辺りを見回してそう叫んだ。誰もいるはずなんてないのに。私たちは結婚したばかり。私も彼も初婚で、ママと呼ばれるような子供に覚えはないから。
でも、もう一度声がした。
「ねぇ、今ならまだ間に合うんだよ…早く！…お願いだから…ママ、マー君…マー君だけは助けて！」
よくよく考えてみると、その声は耳からではなく、頭の中から聞こえてきていた。そう気が付いた私は震えだし、その震えは止まらなくなった。
「あなた！助けて！！」
そうやって声に出して助けを求めたものの、夫にこの事を上手く説明できる自身はなかった。ましてや、これから病院に駆けつけたとして、医師に納得のできる説明ができるとは到底思えなかった。
それでも私は、その小さな声を信じた。
私は、私の切羽詰った助けを求める声に、何事かと慌てて寝室から駆けつけた夫を見た途端ホッとしてへなへなと崩れた。彼はそれを寸でのところで抱えると、心配そうに、
「どうした？何があったんだ？もしかして変な奴でも…」
「ううん、違うの。血が出てるの…で、赤ちゃんが危ないの…でも、今なら間に合うって…」
私はひどく混乱していて、泣きながら思いつくまま今の危機を夫に伝えた。
そんな取り留めのない説明に、彼はうんうんと頷いて、