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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「神のいたずら」 第一章 始まりと嘆き

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しかし、この姿で逢いに行っても・・・多分受け入れてもらえないだろうし、たとえ俺が隼人だって気付いても、もうどうしようもないと考えてしまうだろうからな・・・それが辛い・・・」
「そうね、あなたが隼人さんだって気付いたその時に言いようのない悲しみが襲うわきっと。どうすればいいの・・・ってね。私は残酷なようだけど知らさない方がいいと思うわ。
彼女さんなりの幸せを待っていてあげることが、あなたの愛よ」
「先生・・・」碧の目から大粒の涙がこぼれだした。隼人はちょっとした感情でそうなることを経験した。

早川は持っていたハンカチで碧の涙を拭き、そっと肩を抱いた。触れた手と胸は温かく柔らかだった。
「先生の言うとおりかも知れないな・・・なんで直ぐ泣けるんだろう・・・かっこ悪いな」
「いいんじゃない、あなたが女性らしく見えるから。それから、今日担当医に話して精密検査に異常がなければ、週末に退院出切るようにお願いするわ。早く社会になじまないといけないからね」
「はい、嬉しいです。それから、名古屋の両親にはどう話せばいいのでしょうか?」
「難しい質問ね、それは・・・」

確かにそうだ。隼人です、生きていますよ・・・お帰り、良かったわね・・・とは決してならないと思えるからからだ。

早川医師が診察を終えて部屋を出て行った後直ぐに由紀恵が入ってきた。パジャマではなく普通の服装をしていた。
「あれ?退院できたの?」
「うん、今先生に許可貰って・・・碧も週末には退院出来るんだってね。良かった・・・お家に帰れるね、パパや弥生がどんなに心待ちにしているか」
「ねえ、家って何処?」
「東京よ、豊島区。覚えてないの?」
「思い出せないよ・・・事故の前のことは何んにも・・・」
隼人は由紀恵が傷つかないように、そうごまかした。

「いずれ思い出せるわよ、きっと・・・先生も着いて下さっているし、焦らなくてもいいのよ碧。それより、今日からここに寝泊りするから安心して・・・許しも頂いているし」
「うん、子供だけには・・・出来ないだろうからね、病院も」
「そんな言い方・・・私のことも思い出せないの?パパやお姉ちゃんのことも?」
「すまない・・・でも、きっとあなたの子供なんでしょうね・・・愛情を感じるから。時間くれよ、慣れるまで・・・」
「碧・・・なんだか女の子らしくないよ。どうしてそんな話し方になるのかしら・・・」
「先生が言ってた。先祖帰りって言って、昔の記憶が支配してしまうんだって・・・どうやら男の人らしい。人間って不思議な生き物だね・・・こんなことが起こるなんて・・・」

由紀恵は事故のショックで何らかの異常をきたしているらしいと理解したが、それにしても12歳の娘にはとても思えなかった。
これから中学への就学もあるし、家で待っている夫や弥生への説明もどうしようかと悩み始めた。

「なんと呼べばいいのかな・・・ママ?お母さん?」
「以前はママって呼んでくれていたわ」
「じゃあ、ママ・・・だ。下着を渡してくれたけど、お風呂に入ってないから着替えてないんだ。先生はお母さんに付き添ってもらって入りなさいって言うんだけど・・・どうしよう?」
「じゃあそうしましょう。浴室が空いているかどうか見てくるね」

なんだかそうは言ってみたが、本当の母親でも気恥ずかしいのに、他人の女性と入るなんて・・・そう思った。