クリスマスお父さん
●第十一話
年末行事の一つである忘年会は、大した波乱も無く終了しようとしていた。
人事部、及び、経理部の(それぞれ一部)社員達が同行していたため、鬱憤の溜まったOLパワーに、多くの(特に開発部の)男性社員が尻込みしてしまったのだ。
「チーフ! 二次会の御供をさせてください!」
酔って上機嫌になった若い社員が、真っ赤な顔で声を張り上げた。
店を出て飲み屋街を集団で闊歩する。こうすると少し酔いが冷め、勢いで飲むということが無くなり飲み過ぎを抑制できる。
今回の幹事が得意満面に言っていたが、効果のほどは定かではないようだ。
「自分は、どこまでもついて行きますよ!!」
別の若い社員が声をあげる。ちなみに、得意満面に言っていたという幹事だ。
「バカ! 主任はヤローについて来られても困るって顔してるぞ!」
「若い女の子の方がお好みですよね!?」
―― そんなことを訊いてくるな
近頃の若い奴等は、集団で先輩社員や上司を攻撃するという荒業を持っている。
世代の違いとはこういうときに感じるものでは無いはずなのだが……。
私が苦笑していると、人事部の女性社員たちが近寄ってきた。
「言って頂ければ、いつでもついて行きましたのにぃ〜」
そう言って私に腕をからませてくる。
『若い女の子の方が好みだ』
もしそんなことを言えば『セクハラだ!』と騒ぎ立てられるのが目に見えている。
見れば頬が紅潮している。
間違いなく酔っているのだが、化粧だけはしっかりと直されているようだ。
吉原の押し殺した笑い声が、どこからともなく聞えてきた。
吉原を探そうと辺りを見渡したとき、ふっ、と電柱に隠れるように影が動いた。ほんの一瞬だったが、その男の横顔はつい最近見たことのある顔だった。
―― 上野!!
私は声を出さず叫んだ。社員が私と電柱との間になだれこんで、視界から電柱が隠れる。
社員達を掻き分け、ようやく電柱へとたどり着いたときには、男の影はどこにも見当たらなかった。
こんな日までも私をつけまわしているのだろうか。
まさか本気で打ち上げの費用を経費にあげることさえも横領だと言うつもりなのだろうか。
冗談ではない。
年末行事の一つである忘年会は、大した波乱も無く終了しようとしていた。
人事部、及び、経理部の(それぞれ一部)社員達が同行していたため、鬱憤の溜まったOLパワーに、多くの(特に開発部の)男性社員が尻込みしてしまったのだ。
「チーフ! 二次会の御供をさせてください!」
酔って上機嫌になった若い社員が、真っ赤な顔で声を張り上げた。
店を出て飲み屋街を集団で闊歩する。こうすると少し酔いが冷め、勢いで飲むということが無くなり飲み過ぎを抑制できる。
今回の幹事が得意満面に言っていたが、効果のほどは定かではないようだ。
「自分は、どこまでもついて行きますよ!!」
別の若い社員が声をあげる。ちなみに、得意満面に言っていたという幹事だ。
「バカ! 主任はヤローについて来られても困るって顔してるぞ!」
「若い女の子の方がお好みですよね!?」
―― そんなことを訊いてくるな
近頃の若い奴等は、集団で先輩社員や上司を攻撃するという荒業を持っている。
世代の違いとはこういうときに感じるものでは無いはずなのだが……。
私が苦笑していると、人事部の女性社員たちが近寄ってきた。
「言って頂ければ、いつでもついて行きましたのにぃ〜」
そう言って私に腕をからませてくる。
『若い女の子の方が好みだ』
もしそんなことを言えば『セクハラだ!』と騒ぎ立てられるのが目に見えている。
見れば頬が紅潮している。
間違いなく酔っているのだが、化粧だけはしっかりと直されているようだ。
吉原の押し殺した笑い声が、どこからともなく聞えてきた。
吉原を探そうと辺りを見渡したとき、ふっ、と電柱に隠れるように影が動いた。ほんの一瞬だったが、その男の横顔はつい最近見たことのある顔だった。
―― 上野!!
私は声を出さず叫んだ。社員が私と電柱との間になだれこんで、視界から電柱が隠れる。
社員達を掻き分け、ようやく電柱へとたどり着いたときには、男の影はどこにも見当たらなかった。
こんな日までも私をつけまわしているのだろうか。
まさか本気で打ち上げの費用を経費にあげることさえも横領だと言うつもりなのだろうか。
冗談ではない。