クリスマスお父さん
●第九話
そういえば、今日から美樹は冬休みなのだった。
娘が部屋着のままコードレス電話を手にうろうろしている。
『パパ!邪魔よどいてっ!』なんて言われた日には、倒れてしまうかもしれない。
友達からの電話を待っているのだろう。持ち歩かなくてもいいのではと思うが、口は災いの元という。止めておこう。
私に気付いた娘は、あわてて受話器をテーブルに置いた。
「パパ、おはよう。あのね、美樹は今日家にいるからね。心配しなくていいよ」
内心、溜息がでた。なんとへたくそな嘘なのだろう。
しかし、ここで見透かしたように接してはいけないのだ。だが、それとなくあまり遅くならないように釘を刺しておく必要がある。
「今日は十時ぐらいになりそうなんだ。先に食べておきなさい」
こう言っておけば、その時間の前後には帰ってくるだろう。
今日はノダカイを含めた開発部の忘年会がある。
何を勘違いしているのか、私よりも偉いということを開発部のメンバーに見せ付けることで、自分の威厳が保てると思い込んでるのだ。
ことあるごとに、『開発部主任殿!』と私を呼び付け、取るに足らぬことをさせるのだ。
昨年の新人歓迎会において、『どうしてあんな人の言いなりなんですか!』とその年の新人達にあきれられたものだ。実力社会に変わりつつあるとはいえ、人事の百パーセントが実力によるものではないことを思い知ってしまったようだ。
靴を履いて、いってくる。と言おうとした瞬間、家の電話が鳴り、バタバタと受話器に駆け寄ったのであろう娘の足音が聞えてきた。
「……いってきます」
私は小さく呟いた。とはいえ、今朝は多少なりとも会話が成立していた。いい傾向なのかも知れないと考えると、気が軽くなる。
昨日と同じコンビニで、今度はオニギリと緑茶を買い、会社へと足を向けた。
そういえば、今日から美樹は冬休みなのだった。
娘が部屋着のままコードレス電話を手にうろうろしている。
『パパ!邪魔よどいてっ!』なんて言われた日には、倒れてしまうかもしれない。
友達からの電話を待っているのだろう。持ち歩かなくてもいいのではと思うが、口は災いの元という。止めておこう。
私に気付いた娘は、あわてて受話器をテーブルに置いた。
「パパ、おはよう。あのね、美樹は今日家にいるからね。心配しなくていいよ」
内心、溜息がでた。なんとへたくそな嘘なのだろう。
しかし、ここで見透かしたように接してはいけないのだ。だが、それとなくあまり遅くならないように釘を刺しておく必要がある。
「今日は十時ぐらいになりそうなんだ。先に食べておきなさい」
こう言っておけば、その時間の前後には帰ってくるだろう。
今日はノダカイを含めた開発部の忘年会がある。
何を勘違いしているのか、私よりも偉いということを開発部のメンバーに見せ付けることで、自分の威厳が保てると思い込んでるのだ。
ことあるごとに、『開発部主任殿!』と私を呼び付け、取るに足らぬことをさせるのだ。
昨年の新人歓迎会において、『どうしてあんな人の言いなりなんですか!』とその年の新人達にあきれられたものだ。実力社会に変わりつつあるとはいえ、人事の百パーセントが実力によるものではないことを思い知ってしまったようだ。
靴を履いて、いってくる。と言おうとした瞬間、家の電話が鳴り、バタバタと受話器に駆け寄ったのであろう娘の足音が聞えてきた。
「……いってきます」
私は小さく呟いた。とはいえ、今朝は多少なりとも会話が成立していた。いい傾向なのかも知れないと考えると、気が軽くなる。
昨日と同じコンビニで、今度はオニギリと緑茶を買い、会社へと足を向けた。