小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

表と裏の狭間には 十二話―柊家の黄昏―

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
題名は、『ラグナロク』と読む。
今回は、そんな感じだ。

思えばこれは複線だったのかもしれない。
とか思っても後の祭りで。
今、俺は有閑倶楽部の部室で、ゲームに興じていた。
………輝自作のゲームを。
輝一人で作ったわけではなく、この学校の『そういう連中』を総動員して製作したゲームらしい。
そのせいかクオリティはかなり高いのだが。
………輝が作ったゲームなので。
当然のようにギャルゲーである。
何故俺がこんなものをやらされているのか。
それは、俺以外の有閑部員の見事な連携にあった。
俺が部室に入り、いつも通り過ごしていると。
まず、輝が完成したゲームを自慢してきた。
それを耀が持ち上げ。
理子がたまたま持っていたパソコンを取り出し。
ゆりと煌が悪乗りし。
礼慈がさりげなく話を逸らし。
そして気付いたら俺がプレイすることになっていた。
……どうしてこうなった。
まあ、諦めよう。
しばしゲームをご堪能あれ。

まずはゲームの概要を簡単に説明しよう。
まず主人公だが、このゲームは名前を自分で設定するタイプらしい。
見ず知らずの適当な名前にしようと思ったら、輝が『シオン』に設定しやがった。
仕方がないのでそのまま続行する。
かといって俺の名前でストーリーを紹介するのもあれなので、あえて主人公と表記しよう。
主人公は転校生だ。
高校二年の春、舞台となる高校に転校してきた。
一つ年下の、妹と。
………設定に悪意を感じる。
まあいい。
さて。
転校生として、主人公は脚光を浴びる。
特に取り柄のない主人公は、しかし人当たりがよく、すぐさまクラスの人気者となった。
さて。
この辺りで、ヒロインが登場してくる。
ヒロインその一。
クラスメイト、聖蓮(せいれん)華子(はなこ)。
主人公に何故かひたむきな好意を寄せるお嬢様な外見の少女だ。
………なんかキャラデザインがうちの某クラスメイトと妙に被ってるんですが。
まあ……いい。次だ。
ヒロインその二。
主人公が勧められるがまま入った某文化部の部長、山梨(やまなし)木嵐(きらん)
キャラ設定が、『独裁者っぽいリーダー気質の少女。走り出したら止まらない、常に全速力の暴走少女だが、実は誰よりも仲間想い』だって。
本気で悪意を感じる………。
しかも名前がそのままじゃねぇか。
………次。
ヒロインその三。
ノリのいいことで定評があり、妙に挑発的な後輩、夜寺(よるでら)理科子(りかこ)。
いい加減疲れた。
悪意満々の設定だなこれ。
ではここらで悪意を感じ取った根拠を解説しよう。
まずヒロインその一。
まあ、某クラスメイトって言うのは蓮華のことだ。
聖蓮華子………聖『蓮華』子。そのままだよ。
ヒロインその二。
設定はゆりそっくりだ。
名前も、多分山梨は『山無し』で、嵐の山が消えて『風』だろう。木と風で『楓』だ。
ヒロインその三。
設定が理子だ。
『宵』とは夜の意味だし、『宮』は寺って意味もあるからな。『理』は自然科学、つまり理科だ。
…………よく考えたとは思うよ?
多分、注意してみなければ気付けなかったと思う。
って言うかこれ、半分こじつけみたいなものなんだけどね。
設定をここまであからさまにしなければ、絶対気付けなかった。
………えー?
このゲームを進めるの?
…………周囲からは、『早く進め』的な視線を注がれてるんだけど。
進むしか、ないのか………。
さて、物語を進めていくと、次第に選択肢の出現頻度が増えていく。
ここら辺で物語が分岐するらしい。
『誰を選ぶの?』的な視線を注がれるのだが、まあ、俺としては。
三択のうち二つがおかしな選択肢だった場合、それは事実上の一択であるからして。
聖蓮華子ルートへ。
華子ルートでは、取りとめのない日常生活が綴られていた。
変化のない日常。
穏やかなクラスの日々。
そういった、蔑ろにされがちなものの大切さが、描かれていた。
さて。
物語を進めていくうちに、主人公とヒロインが、少々マジな話を始めた。
主人公が、自分の過去を語っている。
それは、ずっと昔の話だということ。
自分が前にいた場所で、妹と親友と自分の三人で、楽しい日々を送っていたということ。
そして、そこで事件があったということ。
そして、親友はどこかに消えてしまったということ。
更には、自分はもう、親友の顔を、思い出せなくなってしまったということ。
落ち込む主人公を、ヒロインが慰めていた。
……………………。
悪意をビンビンに感じるんですが。
さて。
そんな告白大会イベントから数日後、主人公が、ヒロインを家に呼んだ。
妹に紹介するつもりで。
妹の性格なら、二人があっさり打ち解けてくれると思ったらしい。
ところがどっこい。
『この手』のゲームで、『妹に彼女を紹介する』というイベントは、死亡フラグそのものだ。
案の定。
二人がすぐに打ち解けるというのは主人公の読み違いで。
妹はヒロインにメッチャ突っかかっていた。
兄を自分のものだと主張し、ヒロインに消えるように要求する。
それを受けたヒロインもヒートアップし、血縁関係がどうとか言い始める。
お互いにヒートアップしていく二人。
ここで選択肢が現れる。
なるほど。
この選択で、この後の展開が左右されるわけだな。
選択肢は以下のとおり。
『妹に味方する』
『華子に味方する』
『静観する』
一番上は論外だろう。
三番目も、アレだな。
だから俺は当然の帰結として、二番目の選択肢を選んだ。
その結果、どうにか妹を宥めることに成功し、蓮華には帰ってもらった。
まあ、平和的だったように思える。テキストを読む限りは。
とか思ってた俺が馬鹿だった。
物語はその夜。
主人公の部屋に、誰かが侵入してきた。
誰か?妹だ。
……………。
……………。
……………。
すいません、何か怖いです、この妹。
スクリーンショットがマジで怖いです。
台詞も背筋が震えます。
俺が描写しても意味がないので、以下にテキストの一部を記載しよう。

『「んあ………?どうした?」
「お兄ちゃん………どうしてあんな女の味方なんかしたの?」
「えっと…………。」
「どうして、あんな女と一緒にいるの?」
「そりゃぁ………、友達だし、彼女だし………。」
「そんなの駄目だよ。」
「は?」
「お兄ちゃんは、ずっと私と一緒にいればいいんだよ。」
「はい?」
こいつ、何を言い出したんだ?
って、待て。
こいつ、目が、何か変じゃないか?
明らかに何かおかしい。
顔には影が差していて、表情が読めない。
暗闇の中で、しかし、妖しい光を放つ双眸だけがはっきり見える。
その時。
月が出て、その光で表情が見えた。
死人のようなおかしな目をして、顔に暗い影が差す妹は、うっすらと笑っていた。
「ひ………っ!?」
つい悲鳴を漏らすほどの寒気が、俺を襲った。
「お兄ちゃんは、ずっと私と一緒にいればいいの!」
妹が、こっちに寄ってくる。
俺は、思わず後ずさる。
「お兄ちゃん?どうして逃げるの?そんなに私のこと嫌い?」
「い、いや………、嫌いじゃないよ。うん。」
「それならいいでしょう?それとも何?私よりもあの女のことが好きなの?」
「あの女って………華子か?」
「名前も呼ばないでよ!あんな女のこと口にしないで!」