神々と悪魔の宴 ⑩<悪戯な天使>
何もかも見透かされた天使は仕方なく幼エンゼルの手を離した。天からの声に逆らう事は出来ないのだ。
天使の身体は光の管に吸い上げられる様に高いみ空を昇り始めた。
既に小さくしか見えない幼エンゼルは天使を見上げて泣き叫んでいる。
「ママ、僕を置いて行っちゃうの!? 僕が嫌いなの? お父様の言いつけだから?」
上ってゆく天使は涙を流し続けた。だが涙は零れるそばから霧散《むさん》し、決して地上には届かなかった。
天使は涙と霧で滲《にじ》む地上を見ながら呟《つぶや》く。
「ああ、なんて事を。又、私の子が地上に……。どうして私の子ばかりが、悪戯《いたずら》好きの悪魔に――」
地上で泣け叫ぶ幼エンゼルはこみ上げる悲しみと怒りが滲み出て、その全身が青黒く染まり始めていた。
おわり
07.04.08
№093
作品名:神々と悪魔の宴 ⑩<悪戯な天使> 作家名:郷田三郎(G3)