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いまどき(現時)物語

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高見沢は四人達で繰り広げられている愛憎模様に驚いているが、今は状況を全て飲み込み、現代社会の人生の師匠らしく浮舟に感想を伝える。

「これはね、浮舟、いわゆる愛と憎悪の臨界点というやつだね」

浮舟は臨界点という言葉を初めて聞いたのか、グリーンの目をパチクリさせている。
「愛と憎悪の臨界点って、それってどっか一箇所でも壊れたら、ひょっとしたら全部破裂されてしまうっていう意味ですか?」

「そう、不連続的に性質変化を起こす点だよ、つまりこのケースは、バースト寸前と言うことだね、

椿子と可奈子、そして桜木、この三人の心の中は愛と憎悪で煮えくりかえっている、

だけど朝霧は知らぬが仏、
だから、この臨界点の一歩手前のまま何とか壊れずに、時の流れの中で静かにおさまる所におさまって来た、しかし、これからは無理だろうけどね」

「御主人様、それでこれから私、女影武者として、どうしたら良いのでしょうか?」
浮舟が素直に聞いて来た。
高見沢はしっかりと浮舟を見つめ直し、優しく任務を伝える。

「そうだね、浮舟の任務は、こんな複雑で風紀紊乱、愛と憎悪の連帯関係の中へ更に侵入し、強請りの犯人を見つけ出す事、

そして、その強請りを利用して、どうしたら朝霧が地獄へ真っ逆様に落ちて行くか、そのシナリオを書く事だよ」

浮舟はこれから進むべき方向が明確となり、「女影武者として、やっとやるべき真の任務がわかって来たわ」と満足気だ。
そして高見沢は、「だけどなあ、浮舟、今回は地獄送りのシナリオを書くだけだよ、これは単に浮舟の仮想訓練だけのためだから、調査はするが実行はしないからね」と念押しをする。

「はい、承知致しました」
浮舟は色白な姿態をしなやかに起立させ、黒縁の眼鏡の奥から美しいグリーン・アイズを宝石のように輝かせながら、はっきりと答えて来るのだった。


作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊