いまどき(現時)物語
卑弥呼女王は声を上げて笑っている。
そして、突然きりっとした表情になり伝えるのだ。
「A評価に対する御褒美を、高見沢さんに与えましょう」
「はっはあー」
「それは、荒んだ現代社会を生き抜いて行くための … 心の糧(かて)です」
高見沢は何の事かよくわからない。
「心の糧ですか?
女王様、私、心の糧より … 身体の糧の方が好みなんですが」
「高見沢さん、心を静めて下さい、一言申し上げましょう、
人間の一生は白駒(はっく)の隙(げき)を過ぐるが如し、
一生を月曜日から日曜日の1週間に例えたとしたら、高見沢さんの場合、今何曜日ですか?」
「何の事かよくわかりませんが、えーと1週間が一生としたら、生まれてから十歳までが月曜日、元気の良い十代が火曜日、輝いている二十代が水曜日、えーと、えーと …
女王様、私は今、疲れ果てて心身とも萎みかけている土曜日でありますが」
「そうですね、高見沢さん、もう週末の土曜日ではありませんか、高見沢さんの残りの人生を楽しいハッピー・サンデーにしたくありませんか?
そうするためには、身体の糧より心の糧がもっと必要ではありませんか?」
「そうかもなあ」と、高見沢は何となく納得している。
そして卑弥呼女王は、微笑みながら続けるのだ。
「その心の糧として、
夢浮橋を渡り来た浮舟を、将来に渡って優先的にサポートし、見守って行く権利、
そう浮舟姫に対しての独占的育成権を、高見沢さんに与えましょう」
高見沢はこの言葉を聞いて、黙り込んでしまった。
暫らくの時間の流れ、そして高見沢は、心の奥底から絞り出すように雄叫びを発するのだ。
「ウォーウォーウオー、その心の糧、浮舟の独占的育成権を … イッタラキまーす!」
そして、高見沢は深々と一礼をするのだった。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊