いまどき(現時)物語
「高見沢さん、小夜子花って、もしそうだとしたら、これで犯罪者になるの?
単に朝霧に妻・椿子の不倫の情報を流しただけでしょ、そこから勝手に殺人事件が起こっただけ、小夜子花自身は何も直接的に手を出していないわ、
その上に、桜木が強請って得た朝霧口座のお金を …
全員が死んでしまった今となれば、口座の存在さえ忘れ去られてしまうし、
小夜子花がたとえそれを奪い取ったとしても、誰も気付かないわ、
ここまでが強請りの犯人が誰かも含めての私達の推理なんだよね、ホント、これがもし事実なら、スゴイわ」
浮舟は自分の考えに少し酔っている。
高見沢はこれに対し、念を押すかのように話す。
「そうだよ、浮舟、これで全部の事件の辻褄が合うよな、ひょっとしたら、これが我々の求めていたシナリオだったのかも知れないなあ」
「そうね、だけど高見沢さん、これは未だ私達の単なる仮説よ」
高見沢は、「その通り、今度は、この仮説が真実かどうかを検証する必要があるよなあ」と頷きながら浮舟の潤んだグリーン・アイズを見つめる。
そして浮舟は真正面に高見沢と目を合わせながら、「それでこれから、どうしたら良いの?」と聞いて来る。
「そうだ浮舟、小夜子花に直に会って、確認してみよう」
浮舟も、こうなればどうしても自分の推理を確かめてみたい。
「身震いするほど興味があるわ、是非、私も会ってみたい、連れて行って下さい」
高見沢は覚悟を決めたのか、師匠として高らかに返事するのだった。
「ヨッシャ!」
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊