いまどき(現時)物語
「だけどね、高見沢さん、私一つ疑問なのよ、
朝霧が桜木を殺したのは、妻の不倫を知ったからでしょ、それはわかるわ、
だけど、朝霧はどうしてそれを知ったの、自分で気付いたのかしら?
それとも誰かが教えたの?
もしそうだとしたら、一体誰が教えたのかしら?」
高見沢も言われてみれば、その通りだ。
「浮舟、そうだね、それがもう一つぼやっとしている本当の核心っていうやつかも知れないねえ、俺もそこがわからないよ」
「私もまだしっくり来ないわ」と、浮舟も首を傾げてる。
「朝霧に桜木、そして椿子に可奈子、
この事件は、四人の登場人物がいると浮舟は言っていたよね」
「そうよ、その四人よ」
「しかし、朝霧が妻の不倫を知らない事で微妙にバランスが保たれていた、四人の関係は壊れずに、これからも続いて行く事になっていた」
高見沢はそうは言ってみたものの、何かぴったりとツボにはまって来ない。
浮舟も一所懸命に思考を巡らせている。
そして、二人はじっくりと相関図に目を落とし、隠れている何かの情報を炙(あぶ)り出そうとしているのだった。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊