いまどき(現時)物語
第9章 憎悪の連鎖の巻
キャッシュカード引き渡し事件から、何事もなく三ヶ月の時が過ぎ去った。
どうも犯人は、朝霧の名義のまま株式の売買を日々繰り返しているようだ。
既に時価総額で五千万円までは膨れ上がっているだろう。
そして、これで事件はもう終わりかと思われるような時間の流れの中で、
高見沢も浮舟も想像もし得なかった、なんと憎悪の連鎖事件が始まったのだ。
まず最初の驚きは、朝霧の部下の桜木が殺されてしまった事だった。
桜木は、誰かに公園に呼び出されたのだろうか、後方から鈍器のようなもので後頭部を一撃されて殺害されてしまった。
当然、警察当局は殺人事件として扱い、犯人を追い求めている。
そして、その二日後に第二の犠牲者が出た。
ホテルの一室で、朝霧がナイフで刺殺されたのだ。
毎日、新聞やテレビは連続殺人事件として大きく取り上げ、生々しく報道を繰り返している。
しかし、この連続的な惨劇は、この二件だけでは終わらなかった。
その一週間後に、第三の死者が出てしまったのだ。
今度は朝霧の不倫相手の可奈子。
自宅マンション内で、青酸カリで毒殺されたのだ。
そして、さらに不幸が … 。
最後のとどめ、つまり第四の死者が出た。
それは朝霧の妻。
そう、椿子が宇治川に身を投げて自殺をはかってしまった。
その遺書には、
「夢浮橋を渡り、愛する桜木の元へ通います」とあった。
この四人の複雑な四角関係を知っている高見沢と浮舟、心臓が止まりそうなほど仰天した。
このような連続的な惨劇は、一体どういう事なんだろうか?
そして、犯人は誰?
現在、警察当局も躍起になって、この四人の連続死の真の原因について、躍起になって突き止めようとしている。
そんな状況の中、浮舟から高見沢にケイタイが掛かって来た。
「高見沢さん、私怖いわ、
私が関わった三人が次から次へと殺されて、
そして最後に、四人目の椿子が自殺してしまうなんて … 私を守って下さい」
浮舟は明らかに脅えている。
「ああ、浮舟、怖がらなくていいよ、もう一度二人でよく話し合って、何が真実だったのか考えてみよう、いつものコーヒーショップに出ておいで」
高見沢は優しくそう伝え、
とにかく今は、浮舟が恐怖におののかないようにしてやる事が大事かと思った。
作品名:いまどき(現時)物語 作家名:鮎風 遊