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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第八回・弐】お祭り神社

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「吉祥」
「えっ;」
わいわいしている京助達の群れから少し離れた所にいたヨシコに乾闥婆が声をかけた
「浮かない顔をしていますが…」
乾闥婆が言う
「そう? そうかしら…なんでもない…そう何でもないの…」
そう言ってヨシコが乾闥婆に苦笑いを向ける
「ムカつくの…」
ヨシコが手の中にある中身のなくなった紙コップを見て言った
「凄く凄くムカつくの…」
ヨシコが言う
「何にですか…」
乾闥婆が溜息をついた
「泣き顔見られたの…側にいてくれたの…優しくされて嬉しいのにムカつくのよ…」
ヨシコが紙コップを撫でた
「乾闥婆…私…蜜柑になりたいわ…」
ヨシコが小さく言った
「貴方は吉祥です」
乾闥婆がキッパリ言い切った
「…そう…よね…私は吉祥…」
ヨシコが紙コップに頭をつけた
「コッチにきても吉祥は吉祥…肩書きがないだけで吉祥だってことは変わらないわ…そう…わかってるの…それはわかってるの…でも私…蜜柑になりたい」
ヨシコが言った
「…コレはある人の受け売りなのですが…」
乾闥婆(けんだっぱ)が言うとヨシコが乾闥婆を見た
「理想というのは理想…理想に近づくのはいいがソレ相応に失うこともある…」
乾闥婆がヨシコを見て言った
「…どういう意味…?」
ヨシコが聞き返す
「…簡単に言いますと…今の吉祥を好いている人が…吉祥が蜜柑さんという人物に近づけば今まで通りに吉祥を好いてくれるかはわからない…ということです」
乾闥婆が答えた
「今の私…」
ヨシコが自分の手を見た
「ねぇ…乾闥婆…私…」
「なんです?」
手を握り締めたヨシコが顔を上げた
「…何でもないわ…」
今だヨーヨーの屋台でワイワイやっている群れを見てヨシコが微かに笑った