小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ゆうかのエッセイ集「みつめて…」

INDEX|18ページ/59ページ|

次のページ前のページ
 


「人形」

その日私は、紙の上に人形を作っていた。
ノートの1ページには、その人形の顔があり、姿があり、性格があった。

私はその人形に命を与えるために、一生懸命息吹を吹きかけていた。
次第に形を成してきた、その「人形」に私は名前を与えた。

「フランシス」

彼は、彼女かも知れなかったが、命を授けると次第に自分から動くようになり、色んな事を経験して行った。

仕事をし、そこで恋もした。苦しみも喜びも知った。

しかし、私を振り返りはしなかった。
私に作られたという事も忘れ、私を無視した。

私は不完全な「人形」を作ったようだ。
息吹を拭き込む時に、「感謝」という種を入れ忘れたらしい。

感謝を知らないフランシスは、誰かが何かをしてくれても、「ありがとう」と言う言葉が出て来ない。
当然だと思っている。

周りの人から、次第に敬遠され始め、その事にフランシスが気が付く頃には、皆フランシスの傍へは寄り付かなくなっていた。
可愛そうなフランシス。
私が「感謝」の種を入れ忘れたが為に…。

私は考えた末、フランシスを抹殺し、新たなフランシスを作ろうと画策した。

ところが、私に作られた事すら忘れ、その事を有難いとも思っていないフランシスは、悩みながらも、私の所へは相談にも来ない。

そして いつの間にか、何処かへ行ってしまった。

いつか自分で気付いてくれるのだろうか?

「感謝」という事を…。

そして自分が生きているのではなく、生かされているのだと言う事を。