ゆうかのエッセイ集「みつめて…」
「人形」
その日私は、紙の上に人形を作っていた。
ノートの1ページには、その人形の顔があり、姿があり、性格があった。
私はその人形に命を与えるために、一生懸命息吹を吹きかけていた。
次第に形を成してきた、その「人形」に私は名前を与えた。
「フランシス」
彼は、彼女かも知れなかったが、命を授けると次第に自分から動くようになり、色んな事を経験して行った。
仕事をし、そこで恋もした。苦しみも喜びも知った。
しかし、私を振り返りはしなかった。
私に作られたという事も忘れ、私を無視した。
私は不完全な「人形」を作ったようだ。
息吹を拭き込む時に、「感謝」という種を入れ忘れたらしい。
感謝を知らないフランシスは、誰かが何かをしてくれても、「ありがとう」と言う言葉が出て来ない。
当然だと思っている。
周りの人から、次第に敬遠され始め、その事にフランシスが気が付く頃には、皆フランシスの傍へは寄り付かなくなっていた。
可愛そうなフランシス。
私が「感謝」の種を入れ忘れたが為に…。
私は考えた末、フランシスを抹殺し、新たなフランシスを作ろうと画策した。
ところが、私に作られた事すら忘れ、その事を有難いとも思っていないフランシスは、悩みながらも、私の所へは相談にも来ない。
そして いつの間にか、何処かへ行ってしまった。
いつか自分で気付いてくれるのだろうか?
「感謝」という事を…。
そして自分が生きているのではなく、生かされているのだと言う事を。
作品名:ゆうかのエッセイ集「みつめて…」 作家名:ゆうか♪