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掌の中の宇宙 1

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Episode.6 ヌクォル




校舎はもう暗くて、静まり返っていた。
フィーゴの歩みは唯一のひかりの方へと続いていく
ネネムの在籍する教室にはうっすらと明かりが灯っていた。
小窓から教室に滑り込む。
机に寝そべっている大人が2人
桜先生と菊田先生。
耳の後ろの辺りが気持ち悪くなる。
気配を感じるけど・・・首を微かに振って鈴を鳴らす。
音が反響して・・・ある場所からは音が返ってこない。
いつの間にやら其処には男の子がいる。
机の上に腰掛けて、フィーゴの方を眺めている。
「アルソアの使い魔なの?」
その少年の声はフィーゴの聴覚を刺激しないで直接心に語りかけてくる。
フィーゴの身体的能力を無視できるような力を有している。
(ヤバイ、せめて一太刀;;)
フィーゴの体が宙に舞う、しかし・・・。
健闘むなしくその体は意識を失いそのまま地におちる・・・。


「・・・フィーゴ君、聞こえるかな?
君の一撃が怖かったのでしかたなく意識を断ってしまったよ・・・。
僕としてはお話がしたかったのだけど・・・。
さすがに僕がしでかした事について言い訳は難しいからね。しかたない。
結果的にネネムを罠に嵌めたのは僕だしね・・・。
・・・・。すこしこの世界の話をしたいと思うよ、聞いてくれるかな?
・・・・。
この世界はとても奇妙なバランスを保って形成されているんだ
この世界が始まった時、僕等・・・
4人の力はそれぞれ均等に保たれていたのに・・・
今では僕を含めて3人が彼の力に組み敷かれてしまっている。
ソラのように服従を誓うもの
アルソアのように背くもの
そして僕のように揺らいでいるもの
それぞれの剣の先は色んな方向をさしている
彼には彼の光と影があり
光が消えれば影ばかりが覆う事になる
その逆も勿論あるけどね
時間は静止する事はできないから
物語は彩りを変えてゆくけれど・・・
この世界そのもの
物語を終わらせたり・・・閉じてしまう事
それは僕にとっても悲しい事なんだ
君が囚われる意味はなんだろう?
夢幻の鈴は
外にあって世界を壊し
内にあって自分を壊すからね
まあ君なりに譲れないものがあるのかもしれないけれど・・・
僕の存在意義は揺らいでいて
セルベイスにも力を貸すし・・・
そしてアルソアにも力を貸そうと思う
夢幻の鈴に、更に僕の想いも+して・・・
僕は僕なりに役目を終えて、とりあえず消えてゆくよ
アルソアの頭脳が僕の心を読みきれているかどうか?
彼女の掌に輝く宝石があるのなら
僕にも金色の羽が舞っている
フィーゴ君・・・アルソアを救って欲しい
それがこの世界の彩りを変えずに巡らせる一つの方法だから
僕は原因でもあり結果でもある
全ての事柄全体がこの世界の意味そのものだから
僕の剣は宙を舞っている
今はまだ切り裂く相手を見つけられぬままに・・・」

フィーゴが目を覚ますと教室には誰も居なかった。
首に下げている鈴は瑠璃色に輝いている。
それが僅かな時間しか彩れない事はなんとなく理解できた。
フィーゴには彼女なりの選択もある
それすらもアルソアの掌の中だとすれば・・・
腹立たしい気もすれば「まあいいか」とか思う気持ちもある
尻尾を少しかじってみる
そしてその刹那の時間で消える
物語は続いているのだ。
光速で世界を走り抜ける
研ぎ澄まされた刃のようにその心は輝いている


























作品名:掌の中の宇宙 1 作家名:透明な魚