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真夏の逃避行

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涙声のラジオ



 四日後の猛暑の午後、新しく回収したラジカセから、耳を疑うほど魅力的な女性の声が流れだした。不思議なことに、直接聞くよりも、ラジカセから聞こえる声のほうが魅力的だと、早川は思った。
「こんにちは。みなさん暑さに負けず、頑張ってますか?今週も無事に佐伯はるかのアフタヌーンミュージック。始めることができました。先週末は、凄く素敵な温泉に入ることができました。場所は、な、い、しょ。秘湯中の秘湯とだけ、お伝えします。さて……ごめんなさい」
 佐伯はるかは、急に涙声になった。泣いている彼女の顔が、廃家電回収員の心に蘇り、胸に熱いものが込みあげてきた。
「……ここでコマーシャル。お願いします」
 コンサート情報のコマーシャルに変わった。早川のまぶたから、大量の涙が溢れ出した。
 通り過ぎる主婦や子供たちが、車の中で泣いている廃家電回収員を、訝し気に見ていた。

                  了



















































作品名:真夏の逃避行 作家名:マナーモード