後ろ姿の少年に2
祖母はわたしに距離を置くようになった。しかし優しさは変わらなかった。わたしが外から帰ってくしゃみのひとつでもすれば、遠くから母に「まなぶが寒そうだ、何か着せてやれ」と言うのがよく聞こえた。わたしは悲しくなった。どうしてこんな人を鉄砲で殴ってしまったのか。しかも後で聞けば悪いのは姉の方で、遊びに出て遅くまで帰ってこなかったうえ、そのことを頑として謝らなかったそうである。姉にもきっと言い分はあったろうが、わたしは自分が情けなくなった。あのとき孫に鉄砲で殴りつけられ、祖母はどんなに怒り、また悲しんだであろう。わたしは謝りたいと思った。だが祖母のあの激しい怒りを思いだすと自分からきりだすことは到底できなかった。祖母もまたその話題を避けているふうだった。
わたしが謝ることのできないまま、小学校五年生のときに、祖母は亡くなった。一度は銃を折り曲げながら、おそらく、それを直してくれた祖母。しかしそれを再びわたしに渡すことも、捨て去ることもできなかった祖母。その祖母にもう少し優しく接すればよかったとわたしは後悔している。その後悔は、あの梁にかかった鉄砲のように今もわたしの心の中にかかっている。