朽ち果てる
それから一週間後のことです。
学校に復帰した僕は、あの日と同じように
家に疲れて帰りました。つらそうにしていた母も、ようやく現実を受け入れられるようになってきたみたいでした。また寝て、ご飯だよと言われているのを待っていました。すると僕の部屋をノックする音が聞こえて来たんです。入ってもいい?母の声でした。いいよと軽く答えると、母は手袋をしていました。手術とかに使うアレですよ、ゴム製の。掃除でもしてたのと尋ねると、母はこう言ったのです。
掃除は今からするのよ。
それと同時に、僕の首を絞めてきました。一瞬なにが起きてるのかわからず、目を見開きました。見たことのないような母の顔。ニヤリと笑いながら、呟いてるんです。
「あなたが死ねば、またあの人が来てくれるわ」
あのとき、前原さんが偶然家に立ち寄らなかったらと思うとぞっとします。僕は遠のく意識の中で父にいいました。もしかして、父さんも母さんに?とね。あの人とは、多分前原さんです。母の前原さんと話していた時の笑顔や、見つめる目は恋愛感情によるものみたいです。前原さんに会ってほしくて。かまってほしくて。父さんを殺し、僕をも殺そうとした。
ねえ、刑事さん。
僕の家族は、どうして朽ちてしまったんでしょう。