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介護職、辞めない理由。

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1、我が職場

俺、丹羽直樹の勤めるデイサービスは俺以外全員女性。
以前は他に男性2名ほどいたが、人事異動で同じ法人の他の施設に移動した。
現在スタッフは女性9名男性は俺ひとり・・・
女だらけの中に男ひとりとなった。

俺が今まで勤めてきた職場は、右を見ても、左を見ても、男、男 男の男の
職場ばかり。たまにパートのオバちゃんとかいる職場もあったが、今の
職場のように年齢的に俺と一つか二つしか違わない女性ばかりの職場は
初めて、しかも、この御姉ちゃんたち、仕事もできるが器量もいい美人ばかり。んでもってバツイチばかり、独身彼女無し歴約10年の俺が、恋愛するなというのは無理な話だ。

主任はちょっと太め(レディに失礼だが・・笑)の俺と同じ歳の48、
バツイチ、アニメ声のわりにキツイ!俺には特別キツイ・・・でも
看護士でもある彼女は経験も豊富でやはりチームリーダーたる資質
充分な人だ。

3ヶ月程で習得し,完璧にこなさなければならない仕事を最初に課せられる。
俺は全くできなかった。駄目な奴だこの俺は・・・
本来ならば、主任やスタッフの説得の上強引に辞めさせられるのが
スジらしい。だが、主任の彼女は何故か俺をクビにしなかった。
もう一度俺にチャンスをくれた。懐も深い・・・
施設長達はなんとか俺をクビにしたかった様だが、彼女はそれを拒んだ
「彼等は現場を知らないから」と言っていた。
この親分の為なら死ねる・・・命を張ってもいいと思った。
他にも良き姉御が2名いて、お局クラスの重鎮、いや母のような存在が2名
先輩だが、守ってあげたい、俺にとって大切な人が1名、何でも話せ
る同僚が4名いる。

彼女たちのことは折を見て、詳しく紹介するとしよう。

とにかく、女性は数名寄れば姦しくって言うくらい賑やかで華やか、
朝からキャッキャしてやがる、可愛い連中だ。
今までの職場は朝から顔会わすのは、酒の匂いの残る、野郎どもばかり。
どこそこの風俗がなんだの、パチンコでいくら損したとか
そんなヨタ話ばかり聞いてきた。
今は天国だ。いや本当の天国かも?ここは(既に俺は死んでいるのかも)
とにかく一癖も二癖もあり、時には凶暴に爪を立て、噛み付いてくる
雌猫9匹の溜まり場に餌に餓えた野良犬が1匹紛れ込んで、果たして
この先どうなるのやら。

2、デイサービスのお仕事。

デイサービスっていうのは、、老人向け介護保険の範囲内で行える介護を行う
業種なのだが、ショートステイや特養(特別養護老人施設)さんと違い、
利用者様が、宿泊もしくは入所するというのではなく、一時的に利用者様を
施設でお預かりし、入浴介助から、トイレ介助、そして利用者様の障害の程度に
おいては個別機能訓練を行い、障害を予防改善し社会的に復帰できる様まで職員
が介助してゆく。
時にはリクリエーションや健康体操などを利用者様と共に行い、コミュニケーション
をとり。個人の尊厳を守るのも仕事である。

朝のお迎えは9時5分出発、そして施設に10時に到着、その後バイタルチェックを行い、
血圧等に急激な変化の見られる利用者様には、休息を促し、ベットで休んで頂き、入浴を中止することもある。

入浴の順番を待つ利用者はその間、朝の体操を行う。(普通のラジオ体操みたいだが、ちょっと違う)
入浴は10時半から男女どちらかから行い、12時半までに終了。12時半より昼食13時より
13時半までに食事の後片付け、トイレ介助、口腔ケアを行い、13時半より14時半までは
休息時間となっているが、個別訓練のある利用者は訓練に入る。男性利用者で個別
訓練が終了した人や訓練のない人は将棋をさしたりしている。女性利用者は手作業で折り紙や、習字、脳トレっていうテストみたいなのをする人もいる。
それが終了すると14時半から昼の体操時間、体操の他に指の運動やら、ボール運動なんてのもする。

15時からリクリエーションを30分行い、その後おやつの時間があり、16時5分までにト
イレ介助を行い、利用者様のご家族への連絡帳なるものも記入する。
介護と言う職は利用者様を介護することが主たる仕事だが、介護技術は勿論のこと、送
迎の運転技術から、利用者の身体的特徴の変化を見極める観察能力、どんな利用者様とも、気軽に会話できるコミュニケーション能力、入浴時には洗髪の技術も必要だし、、看護資格がなくとも、ある程度の医学的知識も必要だったりする。
書類作成の事務処理能力も必要だし、職員同士での信頼も重要。
連携する仕事も多いため、足手まといになると最終的に淘汰される。


3.お局

女の職場にはお局さんてのがつきものだ、我がデイサービスにもお局がいて、女の子達を取り仕切っている。

奴はどんな些細なことにも口をだしてくる。マジうっとうしい。仕事の段取り
から、決裁ごとまで、時には人間関係や恋愛沙汰まで・・・
俺は前の職場で恋愛沙汰が、お局やお局予備軍のおばハンどもに発覚してエライめくらった。お局の側じゃ恋愛話は禁句である。
俺のことをガキ扱いしやがって、やたらと仕事にお節介やき、ありがた迷惑なんだよ。
だが、時折ムードメーカー的力量を発揮して、ギャグをかましたりして笑わせる、癒し系的なところもあったり、若手の悩み事の相談相手になったりとマルチな才能も発揮する。

厄介なとこもあるが職場になくてはならぬ存在なのかもしれない。ちなみにウチのお局はみんなからお母さんなどと呼ばれて親しまれている。

時々、もう、限界かもしれんわと洩らすが、まだまだ10年は頑張って欲しいところだ。





4.姉御

姉御という存在が自分には三人います。
一人は実の姉。少し根クラで嫌味の多い亭主と別居状態の
姉は、人一倍家庭的で家族思い。時折母を気にかけて電話
してきたりする。定職つかず、ブラブラしていた俺にハッパ
かけて立ち直らせたのも姉、結婚しないでいる俺に更にハッパをかけそうだ。でも些細な事で俺と口論になったとき、涙を流して
「でもね、でも、あんた、それじゃダメよ・・・」と言って
きた時は流石に俺も「言い過ぎた、ごめん・・・」と
言った。強そうでいて、実は繊細な感情も持ち合わせている。幼いとき、内気で気弱だった俺は豪腕で暴力的な兄とは
なじめず、いつも遊ぶとき姉と一緒で女の子ばかりと遊んで
いた。そのおかげでガキ大将達が公園で草野球する時、仲間に
入れてもらえなかったが(笑)
そしてもうひとりの姉は職場で二つ歳上の先輩介護士の姉御・・
仕事中はとても厳しい。女優の中原早苗さん(故深作欣司夫人)に似たキツイ感じだが、俺が施設長に呼び出されて
降格人事を言い渡されて落ち込んでいた時、
「あんた、最初に入ってきたときより随分変わったじゃない
大丈夫、落ち込むことないよ~」って・・
歳上でタイプじゃないし、結婚もしてるし、決して美人じゃ
ないけど時折、実の姉を思わせる優しさで癒される。怖いけど
大好きな人だ(恋愛感情じゃないよ(笑))

そしてもう一人の姉、我がデイサービスの主任・・・
介護士であり看護士、そして主任を兼ねている。介護経験も
長い。我が仕事の師であり、魂の師だ。
歳は同じだが早生まれだから、姉を主張している。
作品名:介護職、辞めない理由。 作家名:NAO