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お下げ髪の少女 後半

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 書くことがないのに書きたいときは、下の商店街を歩いている人の中で、気になる人物の歩き方や服装、顔立ちの特徴。そんなものを書いた。老若男女を問わず、書き易い人物を探した。見覚えのあるダウンジャケットの中年男を見ていたら、視線が合ってまった。
 間もなく、その男が眼の前に立った。緒方は怯えた。
「きみをよく見かけるんだが、熱心だね」
 やや疲れた感じの中年の男である。緒方の父より少し若いだろうか。だが、声に味がある。微笑んでいた。
「この前から気になってたんだ。本のことでも話さないか。座っていいかな」
「……」
 うさんくさい、という感じではなかった。危険なにおいはない。むしろ温かい人柄を想像させた。
「……少しだけなら……」
「そうかい、じゃあ失礼するよ」
 しかし、ことば使いが初対面の相手に対して適切ではない。その点にかなり抵抗を感じた。後悔していた。