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お下げ髪の少女 後半

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 美緒が嬉しそうに説明した。それは、或る程度実績のある小説家に贈られる文学賞だった。
「やりましたね!やっぱり師匠は並みの人じゃなかったんですね。おめでとうございます」
「おめでとう。お父さん」
 美緒は泣きながら云った。しかし、父親は先程から、やや暗い顔になっていた。
「授賞式はいつなの?お父さん」
「辞退したんだ。俺はそんな柄じゃねえ。二年に一冊、作品集を出してくれれば満足よ」
「そうですか。いいですね。益々師匠が好きになりました」
「そうかい。さすが俺の弟子だ。さあ、やってくれ」
 緒方はグラスを持ちあげて注がれるビールを見ていた。
「下手に流行作家みてえになったら、毎日締め切りに追われて、すり減っちまう。見えてたものが見えなくなっちまう……」
「あくまでも、作品の質に拘泥わるということですね。後悔するようなものは、書きたくないですからね。前に、自己満足でもいいって、おっしゃってましたね」
「解った風なこと云うな。若造のくせに」
「お父さん。いやよ。緒方さんと仲良くして」