お下げ髪の少女 後半
美緒から「あなた」と呼ばれたのは、初めてだった。ぞくりとした。
「じゃあ、その直後に、僕はあの人から声をかけられたことになります」
「つい、うっかり……」
「お父さんに何か云ってしまった……」
「そうなの……好きだって……」
緒方は感動に打たれていた。
「あの人にそんなことを?」
「つい、うっかり……」
美緒は涙を浮かべている。彼女はハンカチを出した。
「凄く仲がいいんだね。お父さんと」
緒方は笑っていた。
「兄の同級生だということも云い忘れて……」
「僕がここに来ていることを、美緒さんはいつから知ってました?」
「ここの存在さえ、最近まで知らなかったんです」
「……」
作品名:お下げ髪の少女 後半 作家名:マナーモード