サイボーグさっちゃん
「ようし、ぼくはうら道を通って、あいつのにげ道をふせぐよ」
さとしくんは、車が通れない道に入っていきました。
つかまえるのは、あのゆうかい男がドアを開けたときです。いま走って行ってもにげられる。さっちゃんはそう思い、自転車をとめて、歩いて、かくれながら車のあとをおいました。
車がとまりました。やっぱり、小さい女の子に声をかけています。
アイドルのようなかおで、ニコニコしながら話しかけています。さっちゃんをつれて行こうとしたあのゆうかい男にまちがいありません。
「あのかおで、だまされるんだわ」
さっちゃんは、車にちかづいて行きました。
「かわいいから、ぜったいアイドルになれるよ。ぼくがお母さんにたのんであげるからここにのって」
ゆうかい男が、ドアを開けました。女の子は、もう車にのろうとしています。
さっちゃんはダッシュしました。
「サイボーグ・ジャンプ!」
車の上にジャンプしてのりました。それから半分ドアの外にでていた、ゆうかい男のあたまの上にとびおりました。ゆうかい男はばんざいをしたかっこうでどうろにキスをしました。
さっちゃんは、おどろいている女の子を、うしろに下がらせました。
そのあいだに、ドアがしまる音がして、ゆうかい男がにげようとしています。
しばらくして、ガシャガシャ、ドスーンという音がして車がとまりました。
さっちゃんが、いそいで行ってみると、ゆうかい男の車が、へいにぶつかってとまっています。
さとしくんがとくいそうなかおでやってきました。
「団地の自転車をちょっと借りちゃった。少しつかれたけど、うまくいったよ」
みると、自転車が何台も道をふさいでいます。それを見て、ゆうかい男があわててハンドルをきって、へいにぶつかったのです。
パトカーのサイレンが聞こえてきました。
「ついでに、110番しといたから」
さとしくんは、なかなか気がつく男の子でした。それから、さとしくんはさっちゃんに「ねえ、あれやってよ」といいました。
さっちゃんは、えっ! と思いましたが、すぐわかって
「サイボーグさっちゃん!」
と、両うでを空にむかって力強くあげました。
【おわり】
作品名:サイボーグさっちゃん 作家名:伊達梁川